ローレライ・ドリーム
2006/8/13


 意外な話だが、海馬はご機嫌な時にはよく鼻歌を歌う。偶にしっかり歌詞が付いている時もあるが、まあ大概は滅茶苦茶だ。だが、歌詞があろうと無かろうと滅茶苦茶だろうと、問題はそこではない。
 じゃあ何が問題かといえば、メロディーだ。はっきり言って、海馬は音痴である。
 しかし別にヘタクソな歌を聴かされて困るとか、そういうことを言いたいのではない。人間誰しも欠点はあり、時にそれが逆に魅力的であったりするわけである。
 つまり、ご機嫌でメロディーが時折と言うには少々頻繁に外れる鼻歌を歌う海馬はやけに可愛く見えてしょうがないのだ。
 そして、現在の海馬はそんな愛くるしい状態でかつ優雅に、本を読みながらティータイムの真っ最中でいらっしゃる。ちなみに場所は色とりどりの花が咲き乱れ、さらに薔薇のアーチなんかがあったりする、なんともメルヘンな場所だ。加えて座っている椅子もティーセットのおかれた机も真っ白で、メルヘン通り越して寒、いや、そんなことは無い。ここを海馬が利用していることには驚いたが、こういう場所で二人きりというのも、恋人らしくていいじゃないか。異世界か、少なくとも異国に飛ばされた気分にはなるが。
「なぁ」
「何だ」
 なんとびっくり、本を読んでいる海馬から返事が返ってきた。
「ここっていつ造ったんだ?」
 そう、前はここも広大な庭の一角に過ぎず、こんな風にちょっと隠れ家チックな場所ではなかった筈だ。休みに入ってからここ暫くは成績不良者の補講があるせいで来ていなかったが、暫く見ない内に随分様変わりしたもんだ。
「……いつだったかな。モクバに聞け」
「モクバ?」
「ここはモクバが造らせた場所だ。偶には外で日に当たれと言うから利用しているが」
 グッジョブ、モクバ。ひょっとして植木やアーチで外から見え難くなっているのは偶然じゃなくてサービスか。ならばそのサービスに甘えて。
「なぁ」
「何だ」
「キスさせろよ」
 海馬はきょろきょろと辺りを見回し、本をテーブルに置いてから、ん、と唇を突き出してきた。これは本格的にご機嫌らしい。
「なあ、何で今日はそんなにご機嫌なんだ?」
 何度か軽く触れるだけのキスを繰り返してから聞いてみた。ところが海馬は自分でもその原因がよく分からないらしい。首を傾げたまま固まってしまった。
 まあ、そんな仕種も可愛い可愛い。海馬の足元に座り込んで、固まった海馬を椅子から引き摺り下ろす。そしてテーブルの反対側へ。
「何を……」
 ごろりと地面に転がった海馬が目を白黒させている。家で飼ってる犬みたいだ。急に抱き上げたり転がしたりすると同じ目をする。
「セックスしようぜ」
 恋人の可愛い姿はお年頃のオレを発情させるには充分でした。
「外だぞ」
「オレたちが居るって分かってるんだから誰もここに来たりしないだろ?」
「む」
「いいだろ、しようぜ」
 本日最大のびっくり。なんと海馬が、オレに抱き付いて、頷いた。え、これ何のサービスだ。あり得ねぇ。
 一つの疑問が脳裏を駆け巡る。これ、本当に海馬かよ。或いは、あとで怖いことになるんじゃねぇだろうな。
 いやいや、今日の海馬はご機嫌なのだ。恐ろしい見返りなんて要求されないって、うん。
「本田?」
 後頭をごん、と殴られる。軽くだから、痛くはないんだけどな。
「おー、ちょっと待ってな」
 本日の海馬のお召し物は白い綿パンとシャツ。土や草の汁で汚したらことだ。体勢を変えてオレが地面に座り込み、海馬を上に乗せる。向かい合った状態で海馬が肩に手を掛けてくる。
「本田」
「ん? 何だ?」
「……もう既に当たってるんだが」
 何が、とは言わないのか。言うまでもないか。
「だってよ、今日のお前五割り増しくらいで可愛いぜ」
「……五割り増し」
 複雑そうに海馬が呟いた。海馬は可愛いって言っても怒らない。うっかり口が滑ったもののオレなら怒るかもしれないと思ったから、怒らないのか最初の時は聞いてみた。だってそれは褒め言葉だろうと言われた時には、あ、コイツ言われ慣れてるなと思ったが。
 いいんだ、今はオレのだから。
「あ」
 シャツを捲って脇腹を撫でると海馬が小さく声を上げた。相変わらず敏感だ。むしろ過敏症のケがあるんじゃないだろうか。そういえばいきなり背中を触ったりするとびくっとしている。
「服は脱がないからな」
「ああ、それはさすがに分かってるって」
 誰も来ないだろうとはいえ、一応屋外であるわけだ。精々捲る程度、脱ぐのはまずい。
「あー、と、足こっちに」
 対面して抱っこちゃん人形みたいに座っている海馬の片足を掴む。服を着たままならお姫様抱っこの状態で横向きに座ってくれた方がやりやすい。片膝を立てて海馬の背凭れ代わりにする。
 目の前の首筋を舐めると海馬が身体を捻った。オレの上でごそごそ動くもんだから当たってる息子が元気になってしまう。
「精力が有り余ってるみたいだな」
「最近来てなかったから溜まってんだよ。お前もだろ?」
 言いながら綿パンの前を寛げて下着ごと摺り下ろしてやる。太腿の付け根が見えるくらいの位置までずらして海馬のまだ萎えてるモンに手を伸ばす。それは数回扱くとすぐに反り返って先端から透明な液体を滲ませた。
「そういやオイルねぇや」
 ふと思い出して零れている液体を指で掬った。後ろ側に手を回して穴の周りに塗り付けるが、緩めるには足りない。濡れて気持ちイイ程度には足りてるらしく、海馬は鼻歌の続きのように乱れたメロディーの声を上げているが。
「あっ」
 もう一度手を前に戻して海馬の性器を握る。少し強めに掴むようにして掌を上下させると、先っぽから多めの先走りが流れて来てそれは溶けたみたいにどろどろになった。
「すげ。お前自分でしてなかったのか?」
「別に、こんなのは、わざわざ一人でするほど好きじゃない」
「じゃあ二人でするのは?」
 聞くと海馬は顔を近付けて、耳のすぐ側で、最近は好きだと言って笑った。
 笑った唇にキスしながら充分な量になった粘液で後ろを解していく。入り口を押し広げるみたいに指先で捏ねると海馬は小さく左右に腰を揺らした。だからそうやって動かれると当たってる息子が早くしてくれって言い出すんだ。
「ぁ、早く」
 オレの息子だけでなく海馬までそう言い出したからタイミングはいいのか。入り口を弄っていた指を一本中に入れる。数回抜き差しをすると穴はあっさり緩んで、二本、三本は立て続けに増やせた。指で中を探るのは程々に、さっきからずっと窮屈がっていた自分の息子を取り出す。
 取り出したモンを見た海馬がそれに指を絡めてくる。細い指の下で血管がびくびくと脈打っている。赤黒い塊に白い指が絡みついている様は官能的だ。
「ちょ、やめろって」
 てっぺんをスイッチでも押すように指の腹で押されて既に元気な息子がさらに元気で聞き分けのない状態に変化する。実際に我慢できなくなるスイッチだったようだ。
「挿れっから腰上げろよ」
 指を除けさせて腰を真上まで誘導する。先端が窪みに当たった。
「あ、は」
 腰を落とさせると海馬はオレの息子を一気に半分近く飲み込んでしまった。海馬が足を閉じたままだからかいつもより膣圧が高い。いや、この場合「膣」圧ではないが。
 残りの半分を収めてしまおうと下から一度突き上げると、体勢の所為か大して強く突いたわけでもないのに奥まで届いてしまった。ざわざわとオレの息子を包む内壁が蠢く。
「ふ、ぅ」
 ざわめきのあとの緊張が長いと思ったら、挿れたばかりだというのに海馬は先にイってしまったらしい。挿れる前に色々弄っていたからだろうけど。まあ、いつもそんなに長くはないが。
 しかし重要なのはこの先だ。何故って海馬は性器への直接刺激や前立腺刺激でイっても満足しない。内臓全体を圧迫される感じや奥深くを突かれる時の持続的な快感とやらが無いとした気にならないらしい。逆に、それさえ満たされれば射精しなくたって満足がいくというのだから不思議なモンだ。大抵そういう時の海馬はダウン系の薬をきめたみたいにとろんとして幸せそうな顔をしている。
 だから、多分満足するってのは精神的な意味もあるんだろう。元々性欲自体は薄いのかもしれない。
「なぁ、動くぜ?」
 一応断ってから軽い突き上げを開始する。海馬の腰を掴んで揺すると、最初はオレにされるがままだったのが段々自分で好きに動き出してきた。繋がってる場所を支点に円を描くように腰を回されるとオレまですぐイキそうになる。
 いつもより深めの挿入になりがちな所為か奥への当たりがキツイ。海馬はそれがイイらしく、外なのも忘れてるのか、切れ切れの声を大いに上げている。
「あ、も」
 海馬の全身が震え出す。普段より早い気がするが、海馬的オーガズムが近いんだろう。随分我慢していたオレの息子もそろそろイキたいと言っている。
 スライドを激しくすると肩に乗せられていた手がしがみ付くようにしっかりと爪を立ててきた。穴の締め上げもさらにきつくなる。
「あ、あ、ぁ……」
 一際大きく震えた海馬がぐったりとオレの立てていた足に凭れ掛かってくる。腰を支えながら数回突いて、オレも、うっかり部屋でしている時の癖で海馬の中に、フィニッシュした。


+++


 とろんと、可愛い顔をしてリラックスモードに入っていた海馬がまた鼻歌を歌っている。今日は随分いい日なんだなと思いながら眺めていると明後日の方を向いていた海馬が突然こっちを向いた。
「思い出したぞ」
「え? 何を?」
 急に振られた話に付いて行けずそう尋ねる。海馬はふふん、と得意気に鼻を鳴らした。思い出したことがご自慢らしい。
「機嫌がよかった理由だ」
「ああ」
 さっきそんな話をしてたっけ。あの時は自分でも分からないみたいだったが。
 海馬は心して聞けとオレの鼻先に人差し指を突き付けた。
「今日で補講日も終わりだろう?」
 それはつまり、つまりそういうこと、だよな。
「っん」
 海馬が身を捩った。そういえば挿れっ放しだったオレの息子が膨張した所為だ。
 オレは可愛いことを言う恋人を抱き締めて第二ラウンドに突入した。


the finis.

 一度やってみたかった庭で青姦。本海の瀬人なら許してくれる気がしました……
 エロ親父どもの所為で可愛いって言われ慣れてる瀬人。トガワ様の本海の瀬人は処女説とはズレてしまいましたが、本海はラブラブ路線というのは参考にしてみました。

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