リリー my Love
2007/1/25


 バイトから帰ると玄関前に海馬が突っ立っていた。コートにマフラー更に手袋の重装備だが、この寒い中いつから待ってたのか、慌てて階段を駆け上がった。
「何でこんなトコにいんだよ。親父帰って来たら危ねぇし、寒いんだから車で待つか何かしろよ」
「今日は一人で来たからな」
 オレが開けたドアの隙間を擦り抜けながら海馬が呟く。さっさと中に入ったってことは、やっぱり寒かったんだろう。
「何で一人?」
「SPも運転手もぎゃあぎゃあ騒ぎ立てるからだ。煩くて敵わん」
 わけの分からない文句を言って、とっとと手を洗った海馬が勝手にオレの部屋まで入って行く。それに続いてヒーターを点けていると海馬が脱いだコートを抱えてハンガーは無いのかと聞いてきたから、押入れから一本出して渡してやった。
 やけに豪華な分厚いコートを壁に吊るした海馬が首だけそらして振り返る。振り返った顔が何だか愉快そうだったから、ああ、また何か企んでんな、と身構えた。
「城之内」
「……何?」
 手招きされ、恐る恐る近付く。途端に海馬は身体をこっちに向けてオレの頭に手を掛けた。そのまま引き寄せられてバランスを崩し、海馬の胸板に顔をぶつける。
 筈が、微妙な、もとい多大な違和感でそれは違うって状況になっている。
「フフ、どうだ、これは」
「……あのさ、お前なんで胸板無いの? ってか何でオレはふかふかの物体に顔埋めてんの?」
 海馬の、胸に、胸が付いてる。いや胸に胸が付いてるのは当たり前なんだけど、そうじゃなくて女の胸が付いてる。要は膨らんでる。
「お前、巨乳が好きだろう? まぁ、巨乳というほど巨乳には作れなかったが」
「そりゃあ、好きって言やあ好きだけどよ。回答がずれてるっつうか」
「今日はお前の誕生日だな?」
 今さっきまで忘れていたが、朝は覚えていて今日だなと思った記憶があるから取り敢えず頷いた。
「誕生日プレゼントが乳では不満か」
 SPと運転手が騒いだわけが分かってしまった。コイツ屋敷にも会社にも黙って勝手に手術してきたんだろ。不満は無いがそっちに動揺してしまう。
「オレは嬉しかったりするけどさ、お前、コレ仕事どうすんの」
「これくらいサラシで潰せば目立たない。潰さなくても、普通に考えて多少太ったかと思われる程度だ」
 やっと顔を解放されて胸の全貌を見る。そうは言うものの、海馬の好きな身体にフィットする服じゃバレバレなんじゃないだろうか。寄せたら谷間作れそうなくらいはあるし。
「シリコンとか、そういうの入れてんの?」
「いや、ヒアルロン酸だ。だから段々小さくなって、半年程度で元に戻る」
「あー、何か気楽な感じな」
「触った感触はシリコンバッグより断然自然、かつ、バッグが破れる心配も無い」
 美容整形とかは良く知らないけどさ。仮にも海馬がやってることだからそういう点での抜かりは無いだろう。
 白いタートルネックのセーターは、前にも何度か着てるトコを見たことあるけど、胸の部分がツンと出っ張ってるだけで違う服みたいな印象がする。左右から押してみると、思った通りセーターを挟み込んで小さい谷間ができた。
「どうだ?」
「えっと、まあ一応、胸があろうが無かろうがちゃんとお前のこと好きだぜ、ってお決まりの奇麗事も言っとくけどさ。あったらあったでやっぱいいよな、胸」
 そう言うと海馬は得意そうに鼻を鳴らした。いつも思うんだけどその仕草は結構可愛い。
「誕生日プレゼントだぞ。まだ包装を取らないのか?」
「あー、もう。お前絶対声出すなよ。ウチは壁薄いんだからな」
 隣の家のテレビの音が聞こえるくらいだ。何で今日に限って海馬のトコじゃないんだと思ったが、多分豊胸で屋敷中大騒ぎになって出てきちゃったに違いない。明日辺り誰か迎えに来るんだろうな。
「まだ飯も食ってねぇのになぁ……」
「ケーキでいいなら手土産に持って来たぞ。食べながらするか?」
 そういえばコートの下に簡素な白い箱が置いてある。海馬がレジに居るって似合わねぇなと想像して思った。
「食べながらってか……」
 食べてからじゃ駄目なのかと聞こうとしたが、袋に気を取られている間に海馬は敷きっぱなしだった万年布団に潜ってしまった。しかも敷布団の上をばしばしと叩いてくる。ここに持って来いって意味なんだろうなと諦めて、ケーキの入った箱を取りオレもその横に寝そべった。
「お、苺ショートじゃん。オレこれ好き。定番だよな」
 二つ並んで箱に入ったケーキを外に出す。銀紙が敷いてあるから枕元に置いても平気だろう。一つを渡そうとすると海馬がごそごそと寄ってきた。
 布団が狭いから、寄ってこられると腕に胸が当たる。セーターの上から少し揉むと、海馬がぴくりと反応した。
「あ、普通に感覚あんだ」
「当たり前だろう。神経はそのままだぞ」
 そういや今の感触ノーブラだったなと思いながらセーターを胸の上まで捲り上げた。ぽろんとお椀型の胸が現れる。
「な、男のロマンっつうの? どうせ食べながらするんだったら女体盛りとかしていい?」
「……先に言っておくが。下は取ってないからな」
「え、ああ、うん。そうだと思ってたけど。女体ってのは言葉のあやだって」
「分かっているなら好きにしていい。誕生日だからな。今日は何でも聞いてやるさ」
 日本の女体盛りっていったら定番は刺身なんだろうけど、偶に見る洋画とか洋モノに出てくるシーンって必ず生クリームプレイだ。向こうは刺身自体あんまり食べないからかもしれないけど、ロマン半減イチャイチャ倍増、って感じがする。
「汚しそうだし先に服脱いどく?」
「気になるならそうするが」
 海馬のセーターともう一枚中に着ていた服を一緒に脱がしてしまう。タートルネックに擦られてぼさぼさになった髪を整えてやると、こっちのジッパーを器用に足で下げてきた。
 ばたばたしながら全部脱いで、海馬がケーキに手を伸ばした。布団に付けるなよ、とだけ忠告を入れると、ヒーターが効いてきてたのもあって海馬は掛け布団を足元の方に蹴り下げた。
「ケーキ二個程度じゃあまりそれらしいプレイにはならないかもな」
「んなことねぇって」
 海馬が持っているケーキから、上に乗っかった苺を摘み上げる。苺の台のクリームも一緒に付いてきたそれを、胸の間にちょこんと置いてみた。
「クリームが冷たい」
「気持ち良くね?」
 上半分のスポンジを外して刷毛代わりにし、片胸にクリームを塗りつけた。挟まれていた果物がスポンジの下でごろごろ転がっている。横に流れる胸を手の平で受けると海馬が身体を揺すった。
「女の胸になると感度も上がってたりする?」
「馬鹿を言うな、神経はそのままだと」
 スポンジを腹にのけてクリーム塗れの胸を揉み込む。あっ、と小さな声を上げた海馬が、足をぶるぶる震わせて硬直した。
「ほら、お前いつもこんなに反応しないし」
 胸に塗られたクリームを舐めながら所々吸ったりすると白い肌が普通に鬱血して、それにちょっと感動した。人工とはいえ本物なんだよな、コレ。
 Cカップくらいかなー、と思いながら揉む片手間にクリームの剥げたスポンジを齧った。
「お前も食べるだろ?」
 手を止めスポンジをちぎって生クリームを掬い、それを海馬の口元に持って行く。舌をちろりと出してオレの指ごと海馬がそれを食べた。
「苺は?」
 海馬が口を開けたので胸の間に置いたままだった苺を拾って小さい唇に押し込んだ。苦しかったのか怒った海馬が残っていた下半分のスポンジをオレの胸に投げ付ける。
「ちょ、何すんだよ。オレに付けても楽しくねぇじゃん」
「だったら楽しい場所に付けてやる」
 海馬は二つ目のケーキをばらばらにして、スポンジの間の生クリームを剥ぎ取った。覆い被さってたオレを蹴って横に移動させると起き上がり、オレの息子を引っ掴む。
「おー、デコレーションセーキ」
「寒いわ」
 生クリームを塗られて元気になっている息子が何だか滑稽だ。いや、気持ちいけどさ。
 海馬がコックの先っちょだけ舐めるから、クリーム塗れの中亀頭だけが赤黒い色を覗かせている。苺みたいだなと呟くと、そんなグロテスクな苺はお断りだと爪先で弾かれた。
「じゃあ普通の苺食う?」
 海馬が分解したケーキの残骸から真っ赤な苺を摘み上げる。
「……グロテスクな方がいい」
 じゃあ早速、と体勢を入れ替えようとしたが、再び押し倒された。
「お前はそこに寝てろ」
 今日は上で踊ってくれるらしい。膝立ちで身体を跨れる。海馬がすぐに腰を落とそうとしたのを慌てて止めた。
「まだそこ何もしてないって」
「ちゃんと来る前に仕込んできてる」
 何をだと思ったが、あっさり入れてしまった海馬の中がかなりびしょびしょだったから、多分ローションの類だろう。この時期だから温感のヤツ。
「歩いてきたんだろ、よく平気だったな」
「何が」
「ローション。よく漏らさないで来れたなー、って」
 がばがばとは言わないけど、慣れてるわけだし、長時間入れっ放しは辛いんじゃないかと思ったんだよ。が、海馬はちょっと躊躇って背後に手を伸ばし、ピンクのプラグをオレに見せた。
「無理に決まってるだろうが」
「あー、プラグね。抜いたトコ全然見えなかった」
 見せられるとそりゃそうだよなと納得する。海馬がプラグをまた後ろに置いたのを確認して、それから腰を揺らした。
「あ、待て」
 バランスを取ろうとした海馬の腰を掴んで下から突き上げる。上半身が跳ねて、丸い肉の塊が上下に揺れた。
「すんげ、ヤラシイ光景な」
「何、が」
「胸が揺れてんの」
 続けて何度も突き上げた。海馬が前のめりになってオレの腹に手を付く。生クリームの上で滑りそうだが、こけることは無いだろうと判断して、腰から手を離し弾む胸を捕まえた。柔らかいゴム鞠みたいな肉を揉んでいると海馬が自分で腰を前後に揺すりだす。
「コレ、そんなにイイんだ?」
「慣れ、ない……から」
 平らな時から触ったり舐めたりはしてたけど、揉まれたり押し潰されたりが未知の感覚だって言うんだろう。海馬が動くのに合わせて突き上げながら、充血して尖った小さい乳首を指先で弄る。
「あ、やめ、もう」
 海馬の性器の先からとろとろ白い粘液が溢れてくる。
 海馬のイキ方はオレにしてみれば普通じゃない。一発出して終わりっていうんじゃなくて、結構長い間イッてる最中になる。発射がゆっくりなんだ。その間ずっと敏感で気持ちいいらしい。
 腰を抱えなおして、海馬がイッてる間にと、ガツガツ下から突きまくる。
「あ、あ、はぁ、んっ」
「イイ? もうちょい?」
「あっ、あぁ、も、あ、あ、っ」
 ヤバイ、声、と思った瞬間海馬がぐったり倒れ込んだ。釣られて発射しながら慌てて崩れてきた身体を受け止める。
「大丈夫かー?」
 海馬に聞きながら薄い壁に目をやった。隣が留守だといいんだけど、まあ居たとしても壁越しじゃ男とか女とか分からないに違いない。そう自分に言い聞かせる。
 ぼんやり荒い息を吐く海馬の背中を撫でながら、クリームの無いスポンジだけのケーキをちぎって食べた。一つだけ残っていた苺を海馬の口許に持って行く。咽喉が渇いてるだろうなと思った通りなのか、海馬は小さく口を開けて苺を齧った。
 そういえばオレの誕生日ケーキだったのに、オレは一つも苺を食べていない。海馬に苺を全部食べ切られてしまってから、ふとそのことに気が付いた。苺色した乳首なら、二つばかり齧ったけどさ。


the finis.

 スイマセンごめんなさい趣味に走りました城之内君お誕生日おめでとう!