Trick and treat!
2008/10/31


「お菓子をくれても悪戯するぞっ!」
 ドアを開け放ってそう叫ぶと、海馬は鳩が豆鉄砲喰らったみたいに真ん丸く目を見開いた。
「城之内……部屋へは静かに入ってこい。それからその科白はなんだ」
「何って、ハロウィン? あ、オレ今日は狼男だから。性的な意味で」
 たっぷり数秒固まった海馬は、認めないぞ! という意思を多分込めて、は? と上擦った声を上げた。
「そんなわけで、トリック・アンド・トリート! お菓子をくれても悪戯するぞーっ」
 オレにとって非常に都合よくベッドの近くに立っていた海馬を、狼男さながら飛び掛って押し倒す。不意打ちは成功、海馬はぎゃあ、なんて色気の無い悲鳴を上げて真っ赤な天蓋の中に倒れ込んだ。
「く、何故トリック・アンド、なんだ……! オアだろう、普通!」
「だってお前んち、いつもお茶菓子出てくるじゃん」
 トリック・オア・トリートでは悪戯できない。お菓子出されてはい終わり、じゃ詰まらな過ぎるだろ、イベント的に。
「ま、大人しく悪戯されてちょうだいよ。お菓子上げるからさ」
 と言っても個包装袋詰め一袋百円の安物だが。手に持ったままだったスーパーのビニール袋から、小粒の丸いチョコレートが写ったパッケージを出して見せる。
「でも、食べるのはあとでな」
 チョコレートとビニールを纏めてサイドテーブルの上に置いた。食べるのはあとで、取り敢えずは悪戯の下準備だ。海馬の服を脱がしに掛かる。
「ま、まだ昼間、んんっ」
 自宅用と思われるタートルネックは海馬にしては珍しくゆったりとしたデザインで、小さい子の服を脱がすように下から捲り上げたらすぐに脱がすことができた。首の部分が顔を通過する時には、鼻とか引っ掛かったみたいだが。
 こんな時間からと文句を言う海馬をエロイ手口で宥めすかして、雰囲気がちょっとノってきたところで。
 あとで、と言ったチョコレートをサイドテーブルからベッドの上に移動させる。悪戯は計画的に、小道具を用意するのを忘れないようにしましょう。
 パッケージを開け、ミルクトリュフと書かれた個包装もギザギザから破って、一粒摘み上げると、海馬の顔が引き攣った。
「お、オレが何するつもりか解ったわけ?」
「この流れで解らない筈が無いだろうが!」
「んじゃ、あーん」
 言いながらチョコレートを海馬の口に近付けた。口。口っていうか下の口。緩ませ済みの海馬の下のお口は、オレが持っていったチョコレートをすんなりと飲み込んだ。というかすんなり過ぎて海馬の反応も乏しい。
「……なんも感じねぇの?」
「異物感くらいはあるぞ」
「その程度かよー。もうちょい恥らうとか何これこんなの初めてーとかさぁ」
 や、海馬に言われたらちょっと白々しい気もせんことはないけど。やり慣れてるとこんなモンだろうな。チョコレートは鶉卵よりちょっと大きいかな、くらいのサイズで、小粒もいいトコだし。
「まあ予測の範囲内か。それじゃ、こっから悪戯本番な」
 大袋からまた一つ個包装を取り出す。
「な、お前、自分で幾つ入ると思う?」


 五つ入れたところで、海馬の顔色が変わった。枕に突っ伏してるから横顔での判断だが、さっきの会話で一旦冷めかけてた熱が戻ってきた感じに、頬がピンク色になっている。
「どーよ。よくなってきた?」
 六つ目をゆっくり穴に押し付けると、海馬はビクリと肩を竦めながら、首を横に振った。
「そーでもないように見えるけど」
「っ、ごろごろして、気持ちが悪い……」
 と言いつつ反応はしてるから、気持ち悪いのが気持ちいい状態だろう。少し力を入れると、六つ目のチョコレートもあっさり海馬の体内に埋まっていった。チョコレートを食べたあと半開きでひく付いてる穴がエロくてイイ。塗してあった粉砂糖に覆われて粘膜が見えなくなってたりするのも微妙に幻想的だ。や、幻想ってこんな時に使う言葉じゃないけど。
 七個、八個、九個、三つ一遍に個包装から出して、てのひらで転がす。まあ、まだこのくらいはいけるだろ。
「あ、ん、ん」
 立て続けに三つを入れてやると海馬が上の口で喘いだ。うつ伏せになってるから白い背中が反り返ってるのもよく分かる。圧し掛かって肩甲骨の出っ張りに歯を立てたら、逃げるみたいに身を捩られた。
「か、噛むなばかっ。いつもそんなことしないだろう……っ」
「いつも一緒じゃマンネリになるだろ。それに今日は狼なんだってば。ほら、食べちまうぞー」
 耳朶を甘噛みして海馬の気を逸らしつつ、十個目のチョコレートを開ける。不意を付いて突っ込むと小さい悲鳴みたいな声が聞こえた。
「おー、カワイー声出たなー。悪戯のし甲斐あるぜ」
「あ、悪趣味! 信じられない下劣さだ!」
 なんか言ってるけど嫌そうな顔はするものの欠片も抵抗しないんだから、オレだけが下劣なんじゃなくて合意の上のプレイじゃんなぁ。照れる通り越して怒るのが見えてるから指摘しないけど。
「はーい、もう一個いきますよー」
「な、ゃ、っあ」
 ぐっ、と押し込む時に抵抗感。あくまで悪戯、あんまり無茶なことをする気は無いので、そろそろ無理かなと表情を窺う。痛いとか苦しいとかそんな感じではないけど。
「もう腹いっぱいになった?」
 うつ伏せだった海馬の身体を背中から抱え込んで横向きにした。細っこい腰に腕を回して、少し張った腹を撫でる。
「さて、と。幾つ入ったと思う?」
「……数えてない」
「勘で」
 海馬は暫く押し黙ったあと、十、といかにも居た堪れないんだという風な小さい声を絞り出した。
「残念、十一個な。結構入ったなー」
 白い腹を軽く押してみる。海馬の手がオレの手を掴みに来た。
「やめ……、押すな、その……」
「飛び出して転がってっちゃう?」
 違う、と否定したまま海馬はまただんまりになった。背面から抱いてる所為で顔は見えないが、髪の隙間から覗く耳は真っ赤になっている。
「た、多分溶けて……、転がる、どころか」
「え? チョコってそんな簡単に溶けるっけ?」
 もっと高温で湯煎に掛けなきゃ駄目じゃなかったっけ。そりゃ手に持ってるだけでもべとついてくるし、手よりもずっと熱い身体ン中に入れればべとつくくらいじゃ済まないだろうなとは思ってたけど。
 体勢を変え海馬の腰を上げさせる。後ろに回って肉の薄い双丘を割り開くと、中央で震えてた穴が歪んでぱっくりと口を開けた。
「うわ、マジでどろどろになってら。この中突っ込んだらあとで笑えることになりそうだよなー、オレが」
 こう、チョコバナナを連想する感じで。けど一回出しに行かしたら風呂場に籠城されそうな気がするしな。
「溶けてんなら、ここに挿れてもいっぱいいっぱいになった分は溢れるから身体辛くないよな?」
「か、身体の問題かっ」
「そうだろー。プレイで身体壊したら馬鹿みたいじゃんか」
「そっちの意味じゃない!」
 いやまあ解ってんだけど。辛くなきゃ何してもいいと思ってるのかって意味なのは。しかし今日は悪戯という趣旨のプレイなわけで。
「ぁ、ば、か……っ」
 融けたチョコレートの中へさっきから勃ちっ放しだったオレジュニアを沈める。挿れ切る前から結合部は逆流してきたチョコレートでべたべただ。全部沈め切れば言わずもがな。溢れ返ったチョコレートを海馬の白い尻やら太腿やらになすり付けた。
 そしていざ動こうとしたら。
「やっべぇ、コレ超やりにくいわ」
 チョコレートが纏わり付いて重い。動かす時の摩擦とかそういうのが半端無い。普段のエッチに使う体力が百メートル全力疾走並だとしたら、コレ終わった頃にはオレ、フルマラソンした気分になれんじゃね? ってくらいに。
「こ、の、ばかっ! やる前に考えろっ」
「やー、待って待って、頑張るから」
 海馬の足がオレを蹴り倒すべく暴れようとしたのを押さえ付ける。スローペース気味にやればそんなに大変でもないかな。楽観的になれオレ。
 取り敢えずゆっくりめに動き出してみる。やっぱり重たいんだが、海馬は満更でも無いっぽい。チョコレートが纏わり付いてくるってことは、内壁の方はこすれる刺激が無くなって、粘膜を引き摺られるような感覚だけになってるんだろうか。それがどんな具合なのかは想像付かないけど。
「どーなることかと思ったけど、これはこれであり?」
 焦れたように突き出した尻を揺らす海馬はエロカワイイし、バックだから多少中への刺激が弱くてもぎちぎちに伸びた穴の周りだとかはみ出た内壁の肉だとか、最悪玉でも竿でも弄ってイかせられるし。まあオレはあんまり気持ちよくないんだけど、そこは自業自得ということで。
 スローなグラインドは止めないまま、穴の縁でめくれたふわふわの肉を指先で捏ねた。目の前でそれがきゅっと縮こまる。縮こまったところを更に指の腹で押し潰すと、海馬本体も縮こまった。
「ゃ、そこ、は、あまり」
「お、ここ弱いんだ? 新発見」
 チョコレートを擦り込むように揉んだり動くシャフトに押し付けたり、充血した肉をあの手この手で苛めてたら、海馬の足が硬直した。次いで、ぱたっ、と軽い音が落ちる。
「ぁ」
 振り返った海馬が泣きそうではないけど割りと泣きたそうな顔で自分の身体の下を覗いた。大きく身を捩るポーズは扇情的だが、視線の先にあるのはまあアレだ。海馬自身の精液。
「今の、突いたタイミングじゃなかったよな? ここ、そんなイケるくらいよかった?」
「ぅ、るさ……」
 突っ込まれてとか直接前を触られてとか以外でイクのって恥ずかしいんだろうか。ちょっとじんわりきてるっぽい。
 ずる、とまだ終わってない自分自身を抜く。抜け落ちる瞬間に海馬がぶるりと震えて、それから怪訝な顔でオレを見た。
「なんで、まだじゃないのか」
「んー、やっぱ動き辛くってさぁ。お前がここ気持ちいいならこっち使わせてもらおうかな、と」
 内壁がはみ出たまま戻る気配の無い穴に竿の裏側を当てる。あんまりない双丘の肉を左右から手で挟んで寄せ、竿に被せた。あとは素股やパイズリの応用って感じで。
「ひぁ、あ、ぁま……、っ、て」
 ぱたん、ぱた、とさっきの残りだろう白い体液が、海馬の正しい方の性器から垂れてシーツに落ちた。このシーツもう駄目だろうな、気を付けてたつもりがチョコレートも付いちゃってるし、なんてことが一瞬頭をよぎったが、今は気にしないことにする。海馬が焦らされてたのと同じくらいオレも焦らされてたわけで、気にしてる余裕も無い。
「ぁ、あ、じょ……の、ぁ、もっと、つよく、し、て、くぁ」
「もっと?」
 枕にしがみ付きながら、切れ切れに海馬がリクエストする。言われた通り押し当てる力を強くすると、柔らかい感触の肉が、シャフトの下でぐにぐにと蠢いた。
「あ、今のすげーイイ」
 思わず呟きが口を出る。押し付ける力は変えず律動を速めた。行き来する度息子の先端が蠢きを引っ掻いて、海馬の背中を跳ねさせる。
「あ、もっ、あ、あ、あ、あぁ、あ、あん、あ、あ、やっ、あ、あ、ぁ」
「うわ、待てって」
 見えなかったがイったらしく脱力した海馬の身体が崩れそうになるのを支えて、自分もあとを追い掛ける。発射直前で腰を引いてチョコレートに塗れた穴の上に白濁をぶちまけると、海馬が小さく声を漏らした。


「シャワー」
 数分ぼけっとしていた海馬が、そう言ってベッドの上に起き上がった。そうだな、シャワーだな、チョコレートがな、なんて人ごとのように思い掛けて、自分も笑っちゃう状態だったのを思い出した。
 海馬がベッドから降りて浴室に向かおうとする。足下がふら付いてて危なっかしい。しかも。
「海馬! チョコレート垂れてる!」
 毛足の長い絨毯に付いたら惨劇だ。おまけに確認しようと見返った海馬がバランスを崩して傾いだ。
「ちょ、何やって……!」
 シーツを引っぺいで駆け寄る。倒れ掛けた海馬をシーツの中に受け止めた。そのままぐるぐる巻きにして担ぎ上げ、垂れたチョコレートによる襲撃から絨毯を救っておきもする。全力疾走のあとだけど大丈夫大丈夫、引越しバイトの時に運んだ家具よりは大分軽いし……自己暗示入ってんな、コレ。
「はーい、ハロウィンらしく布お化け捕獲っと。風呂場行くから暴れんなよ」
 何がハロウィンだ! に始まりお決まりの犬だの凡骨だの今回はもうちょっといって下衆だのなんだのがシーツの中から響いてくるが。
「なんだよ、お前だって最後ノリノリで『もっとー』っつったじゃん」
 まあ、認めて大人しくなるようならそれは海馬じゃなくオレは本物の布お化けを担いじゃったかもしれない恐怖に震えることになるわけで。浴室まであと数歩、この暴れる塊を落とさないように、精々努力させていただきますとも。


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 2008ハロウィン城海編。ハロウィンネタを書いていた筈がチョコレートプレイを書いてた筈が素尻(仮)プレイを書いていた。
 城之内君は狼男ですよね!