A violet -at the backstage-
2006/12/5
ふと時計を見る。六時、だ。ちょうど営業部から上がってきた提案書に目を通し終えたところだった。事業拡張の提言といったところか。
まあ、やれば巧く行くだろう。収益率は低いが、それを補えるだけの非金銭的利益もある。特に、現在娯楽の影に埋もれがちな福祉分野を目立たせることができるのは宣伝効果として実にいい。福祉も経営の内とはよく言ったもので、それに、そんな打算的なことを考えなくとも、福祉に関心の高い兄はまず間違い無くこれをやりたがるとみていい。
提案書の表紙にペンを走らせ、その文字の上へさっき使った切り机上に置きっ放しだった印鑑を押す。
持ち帰る書類と道具を纏めて鞄に詰めた。兄は開発室に居る筈だ。クリスマスシーズンに売り出す新製品の最終チェックでここ数日はずっとそうしているようだったから。信頼度の成長を表すグラフは既に理想的な形にまで伸びているとオレのところにも報告が来ているし、エラーなど取り切れるものではないのだからこの辺りで妥協するべきだが、完璧主義の気がある兄はまだ納得がいかないらしい。完璧を求めるのはいいが、それで生産が遅れては元も子も無いだろうに。
兄が帰らなければ帰れないばかりかチェックも終えられない所員を救うべく開発室へ向かう。途中承認印を押した提案書を営業部へ戻し、今のような企業体質になったのはいつのことであったか、そしてどれだけの人が前身となった産業を知っているのか考えた。
「お帰りなさいませ」
あと少しあと少しとごてる兄を宥めて生産許可を出し、屋敷に戻ると時計は先より二回転ほど進んでいた。
「もう八時? お腹が空く筈だよ」
「すぐにご用意致します」
帰宅の車中で連絡を入れているから、すぐは本当にすぐだろう。このところ開発室に詰め切りだった兄は食べるよりも寝たいと呟いているが。
ものを置きに二階へ上がる。使用人を追い払ってしまった兄を部屋まで送り、それから自室へ向かった。
靴を脱いで、どうせまたすぐに出て行くのだから室内履きを無視して部屋に入る。クローゼットからハンガーを出して上着を吊り、ほどいたネクタイを軽く丸めてテーブルの上に置いた。巻いた幅広のタイが緩んで大剣を外に投げ出す。そのまま仕舞うわけではないのだと、それを巻き直すことはせずに部屋を出た。
食堂ではなく兄の部屋がある反対の翼へ向かい、閉じられた扉を軽く叩く。入室を促す声に扉を開けると、ソファに座った兄が足元に置いた何やら大きな箱を開封している様が目に入った。
「何? それ」
「ペガサスから」
ああ、と相槌を打つ。そういえば、残暑の休暇先へ置き去りにした荷物はまだ届いていなかったのだ。
「随分遅かったね」
「あんな離島に住み着いているからだろう」
箱の中には、見える限りでは衣類ともう一つの箱、それから厳重に梱包されて何なのか判らないものが入っていて、その一番上に白い封筒が置かれていた。その中から兄が幾分厚みのある二つ折りのカード状のものを取り出し、緩慢な動作で開く。内側には簡易なメッセージと小さなスイッチのようなものが付いていた。兄の指先がスイッチに触れる。ハロー、と、陽気な、気の抜けるような声がカードから流れた。
『約束の薔薇と服を送りマース。それから、泉の底を浚ったらストールが出て来マシタが、ハムレットを読んでいたユーにヴァイオレットもナイと思ったので、それは別のものを差し上げマス』
兄はメッセージを聞きながら箱の中身を外へ出している。何なのか判らなくなっていたものの厳重な梱包が解かれ、中からガラスケースに納められた、それ一つでインテリアのようにも見えるドライフラワーが現れた。ふと兄の口許が緩む。
『それと、クリスマスにはパーティを開きマスから、予定を空けておいて下さいネー。他のパーティに行ったら泣きマスヨ』
一方的に流れていったメッセージは一方的にそう宣言し、出自の怪しい発音で、それではグッドバーイ、と結び、やはり一方的に終わった。
「クリスマスパーティ、去年もだったね?」
「ペガサスのパーティは気楽でいい。パートナー同伴の必要が無いからな」
言いながら兄は封筒の中から残った招待状を摘まみ出した。白地に金の縁取りのカードには、当然だが、普段居る愉快な兎は存在しない。
パートナーが不要なのは当人が独り身だからだろうが、こうして毎年どこよりも早く招待状を送ってくるのはある意味女嫌いの兄に対する配慮のようだと思った。兄の女嫌いは、というより他者との接触嫌いは、割合有名だ。それこそ、全ての縁談が兄を飛ばしてオレのところへ来る程度には。
「モクバ」
「うん? 何?」
「招待状、今年は二枚だ」
二枚。兄だけでなくオレも招かれているということか。今年は、大して親しくもない取引先へパートナーに扮した秘書を連れて顔を出すあの業務から開放され、しかも兄と過ごせると。
「嬉しそうだな」
「そりゃあね。ただ、どうして今年になってというのは思うけど」
先日の夏城訪問で知人から友人に認定されたとかだろうか。そう親しく話した記憶も無いが。
「そんなに行きたかったなら、去年だって二枚送るよう打診してやったのに」
「そのパーティに行きたかったわけじゃなくて……うん……いいや、そっちの箱は何?」
ストールがどうとか言っていたし別のものをというからにはそれなのだろうが、ヴァイオレットもないとはどういう意味だ。あの浮かれアメリカンは、それとひょっとしたら兄も、言葉遊びが好きなようで端で聞いていると時折意味が解らない会話をしている。
「ストール……」
箱を開けた兄が納められていた布を取り出してびらりと広げた。くすんだ緑の、よく前菜に入っているオリーブのような色の薄いストールだ。
「……この時期に春物を送って寄越すとは」
「案外すぐだよ、春なんて。いい色じゃない。前のよりいい」
羽織ってみてと言おうとしたが、扉を叩く音にそれをやめる。
「食事の用意ができたかな」
「あまり、食欲が無いんだが」
「そんなこと言ってるからこんなに痩せてるんだ。開発室に篭ってる間、食事抜いたでしょう」
無言は肯定の同義語だ。黙ってしまった兄の腕を取って立ち上がる。渋る背中を押して部屋を出ると、扉の外で待っていた執事が、今日は消化のよいものを用意しておりますのでと兄に告げた。暫く食事を疎かにして弱った内臓へはそれでいいだろうが、オレは肉か何か食べたかったなと、心の中で思った。
あっさりとした野菜のリゾット、むしろ雑炊、に酒蒸しの白身魚とサラダ、デザートにブラウニーが付いたがやや物足りない。しかし兄にはそれで充分だったようで、リゾットは僅か、魚もオレの半切れだったにも拘らず食べ過ぎたなどと言っている。
「瀬人様、最近体型変わられましたね」
食後のコーヒーを運んできたメイドが小食の兄にそう漏らす。オブラートに包んだ言い方だが、要は痩せ過ぎだと言いたいのだろう。兄はそんなことないだろうと反論したが、彼女はいいえと緩く首を振った。
「スーツの身ごろ詰めさせて頂いたの御存知ですか」
「何!」
毎日着ているのに気付かなかったらしい。オレだって知らなかったが、考えてみればどう見ても痩せているのに服のサイズが合ったままなわけがない。去年着た切りの礼服を仕立て直さなければならないと、兄はクリスマスに向けた勧告を受けている。
「礼服って言ったら、さっきの招待状、ドレスコードは何だった?」
「準礼装以下平服以上」
「……だいたい何でもいいってこと。ああ、そうだ、オレの礼服も仕立て直してくれる? 多分腕周りがきつくなってると思うから」
メイドは、分かりましたが採寸明日でよろしいですかと、恐らく彼女の中で決定事項のそれを尋ねた。構わないと答えるのに、兄も同意して頷く。明日はどうせ休みだ。
コーヒーに口を付ける兄の視線がじっとオレの腕を見詰める。穴でも開ける気だろうか。
「太ったわけでは無さそうだな。お前、いったいどこで鍛えてるんだ」
「貴方の見てない所」
後ろでメイドが少し笑った。子供の頃の世話役だった彼女には、どうも色々見透かされているような気がしてならない。連日使った痕跡が無かったりするオレの部屋のベッドは、果たしてどう思われているのだろうか。何も言わないと何も知らないが同義でないことくらいは判るのだが。
最後の一口を飲んでしまう。今日のコーヒーは苦かった。
自室に戻りシャツとズボンを脱いで籠に入れる。さて、兄の見てない所とはこのことだ。風呂に入って兄の部屋に行く前に、もはや日課となっている軽いトレーニングに励む。
トレーニングといっても、いかにもな器具などは無い。こういうことはひっそりと、やっているのかどうかもよく分からない程度にするのがいい、というより大っぴらに鍛えているとばれるのも何だか気恥ずかしく居た堪れないから、オレがするのは本当に身一つでできることだけだ。
腕立て、腹筋、スクワット。大した目的があって始めた習慣ではないが、強いて言えば兄を含め虚弱気味なプログラマー連中や、デスクワーク一本で運動不足なのか樽と化している中年社員という反面教師が子供の頃から周りに居たことが理由だろうか。
まあ、虚弱な兄がダウンした時に自分が運べたら他人に触れさせなくて済むな、という邪な目的があったことも否定はしない。最近では、勢いに任せてベッド以外の場所で行為に及んだあと助かっている。
日課分を終えて浴室へ向かった。そのあとは、何か思われるのは確実だが、自室ではなく兄の部屋で眠る。ここ数日兄が開発室に詰めていた期間は自分の部屋で寝ていたから、兄の寝台は久し振りだ。
しかし何というか、兄の在不在でオレのベッドの使用未使用が変わるのは大層露骨に違いない。
全身を洗って、最後に熱いシャワーを頭から浴びる。髪の水気を落とし脱衣所へ出、バスタオルを手に取った。この頃髪を拭くのに時間が掛かる。冬になったからかと思ったが、また少し髪が伸びたのかもしれない。鏡を覗き込んでそんな気になった。
棚に置いてあるナイトウェアを着て自室を横断し廊下へ出る。反対の翼までの移動は面倒だ。その内部屋を変えてやろうと思う。
部屋を訪ねると兄は既に寝台の上で力尽きたように転がっていた。最初は縁に腰掛けていたのだろう、何も掛けず、足を外へ放り出している。このままでは風邪を引きそうだ。
肩を揺すっても曖昧な返事しかしない兄の身体を片腕で抱えて、空いた手で羽根の布団を捲る。軽過ぎて捲り難いそれに苦戦していると夢うつつの兄が小さく呻いた。
「あ、起きちゃった?」
「……今日は、眠い……」
「うん。しなくていいから、ちゃんと布団の中に入って」
体温の低い身体を抱いて自分も寝台に潜り込む。間も無く深い眠りに落ちた兄を眺めながら、一日延びた禁欲生活に溜め息を吐いた。
「さっき瀬人様のウェストを計ったら私より細かったんです」
翌日の昼、メイド数人によって形成された簡易採寸室で昨日採寸を頼んだメイドがそう呟いた。因みに、兄の採寸は午前の内に終わっている。
「……気にしなくていいんじゃないかな。それは兄サマが痩せ過ぎだよ」
「ええ、私もそう思います。……腕を上げて下さいますか」
二人のメイドによって胸と胴にメジャーが巻かれた。彼女たちが読み上げた数値をまた別のメイドが表に書き込む。続いて背の無い椅子に座らされ、首周りを測られた。首に細いものを巻かれるというのは、いかに絞められることは無いと信頼していてもどきりとする。
「モクバ様はじっとしていて下さるから採寸がし易くて有り難いですわ」
一人がそう言ったのに他の皆が同意する。どうやら午前の採寸では苦労したらしい。
「兄サマは暴れでもした?」
「首周りを測る時が一番大変だったんですよ。寄るな触るなの挙句、結局ご自分でお測りになって」
「ウェストだって大変でしたわ。嘘だ、測り直せ、って。それは私たちの科白でしょう」
「それに、お洋服を脱いで下さらなかったから測り難くて」
一番若い、新しく入ったばかりのメイドが不平を零した。周囲の顔付きが、やってしまった、と言いたげなものに変わるが、本人はただ首を傾げる。
「子供の頃事故に遭われて傷痕が残っていらっしゃるの。気にされているから、そういうことは口に出さないようにね」
古参の一人が彼女に注意する。内容は大嘘だが、彼女は慌ててオレに謝った。オレに謝られてもどうしようもないし、兄が聞いていたわけではないから別にいいけれども。
「ですけど、傷痕って言ったらモクバ様にもありますよね」
服を脱いでいるのは上半身だけだが、たとえ全身だったとしても、そんなものには覚えが無い。今までに指摘されたことも、一度だって無い。そう思ったのだが。
「薄っすらですけど、爪痕が背中に」
色男ですねぇ、と背中を指で突付かれる。古参のメイドを中心に数人が、瞬間的に凍りついた。つまり、今顔色を無くした数人はそれが誰の爪によって付けられたものか知っていて、残りの、好奇心に目を輝かせているメイドたちは何も知らないということだろう。
「仕事一筋かと思ってました。お相手、どんな方ですか?」
「瀬人様ご存知なんですか?」
女の人というのは概ねに置いてこの類の話が好きなのだろうと思う。弟か、さもなくば息子のような年のオレに対しては、そう言った話題も振り易かろう。しかしこれに何と答えたものか。
「はいはい、静かになさい。プライベートに触れてはいけません。最初に言われたでしょう」
世話役だった、この中では最古参の彼女が騒ぎを鎮める。一応その決まりに覚えはあるらしく、彼女たちは口を噤んで顔を見合わせた。
「あと測っていないのはどこ?」
「腕周りと背肩幅だけですー」
「じゃあ、あとは私がやるから皆は大門さんの所に行って頂戴。人手が足りないみたいなの」
はぁい、と明るく答えてメイドたちが部屋を出て行く。つい吐き出した安堵の息が二人重なった。
「良い子たちなんですよ、基本的には」
「分かってる」
「怒らないでやって下さいね。……教育係のことも」
「怒らないよ。外で吹聴するのだけはやめて欲しいけど」
同感ですと協調される。肩に沿わされていたメジャーが外された。
「それより、事故って、今はそういうことになってるんだね」
「ええ。新しく入ってきた子たちにはそう説明してます。あれから随分入れ替わりましたから、もう殆どの使用人がそうだと思っているかもしれないですね」
腕周りを測られながら、最近では屋敷の中も平和呆けしているのだなと思った。限度があれば悪いことではない。
「昔に比べて気が緩み易いんですね、きっと。あの子たちにとっては最初からそうでしょうけど、私たち古参にしてみれば、最近の働き易さはあり得ないくらいなんですよ」
「磯坂たちにとっても、最近のここは過ごし易いの?」
「過ごし易いですよ。何より瀬人様の癇癪が減りましたし」
思わず笑った。彼女は兄には内緒だと言って、皆そう言ってますと、必要も無いのに声を潜めた。一時期の暴君だった兄を思えばそう言われるのは仕方ない。兄が聞いたら怒るだろうけれど。
「ですから、私たちは現状を歓迎してるんですよ」
現状の指す範囲を考えて、そう、とだけ相槌を打った。彼女はさっさと採寸を終えてしまって後片付けをしている。メジャーを仕舞うために取っ手の付いた緑色の木箱が開けられ、それは裁縫箱のようだった。
「……その箱の中、糸も入ってる?」
ふと思い付いて尋ねると、彼女は勿論だと頷いた。それがどうかしたのかと逆に問い返される。
「ちょっとね。五センチ、いや、十センチくらいあった方がいいかな。それくらい切ってくれる?」
「糸をですか? 色はどうしましょう」
「そうだな、白がいい。ああ、そう。それくらい」
シャツの釦を掛けてしまい、やや太目の白い糸を受け取る。何に使うのかという問いには秘密だと答え、片付けを少し手伝って部屋を出た。
私室に居なかった兄を探して屋敷の中を回る。こういう時、広い屋敷は不便だ。どこに居るのかすぐには見付けられない。まあ、兄の場合は案外行動範囲が狭いから、使用人たちに聞きながら探せば苦労するほどではないのだが。
「瀬人様でしたらサンルームで午睡を取られていたと思います」
「何、午睡って、寝てるの」
徹夜続きだったから疲れているのだろう。昔は徹夜明けだろうと関係なく普段通り活動していた気がするが、いつまでも十代の体力ではいられないということか。
何か飲み物とペンを持ってくるように頼んでサンルームへ出る。聞いた通り、兄は弱い陽光を浴びてデッキチェアでまどろんでいた。外では葉を落とした薔薇の低木が風に吹かれているが、ガラス一枚隔てたこちら側の室温は、寒くないよう空調で暖かく保たれている。
隣のチェアに座り、読んでる最中に寝たのか兄の腹の上に伏せられている本を取り上げた。栞を挟んで本を閉じる。‘カント’の作者名が著名な哲学者であると気付くまでに時間が掛かった。ぱらぱらとページを捲ってみるが、兄とはつくづく読書の趣味が合わないと確認するに終わる。
どこが良いのだろうと本を眺めていると邸内に繋がる扉が叩かれた。一拍置いて、開いた扉からワゴンを押したメイドが入ってくる。
「お茶をお持ちしました。ペンは、これでよろしいですか?」
「万年筆? いいよ、有り難う」
声を潜めた遣り取りのあと、ワゴンを置いて彼女が立ち去った。ワゴンにはポット入りの紅茶とカップが二つ、それに紺色の万年筆が乗っている。
本をテーブルに置き、眠る兄の腕をゆっくりと持ち上げた。起きないように最善の注意を払い、手先をこちらに引き寄せる。先に用意した糸を胸ポケットから取り出し、軽く握られた兄の手を開かせた。細い指がぴくりと震え起こしたかと慌てたが、別に起きたわけではないようだ。寝顔は、顔色が良いとは言えないが、穏やかなままだった。
白い指に糸を巻き付ける。ワゴンの上の万年筆を取り、二重になった部分に印を打った。最も太い関節の位置と巻き付け印を付けた糸の位置がずれていないことを確認し、兄の指からそれを外す。二つの点が挟む間の長さは狭い。試しに自分の指へ巻き付けてみたが、点は全く重ならなかった。
クリスマスに指輪、は、やはりベタだろうか。いや、今更考えるまでも無くそうなのだが、しかし誕生日の時にも考慮したように、贈るなら何か身に着けるものをと思うのだ。花は花で喜ばれたが、今度は残るものがいい。
糸を仕舞う。測ったのは薬指のサイズだ。立場上、当然のように普段着けることができるわけではないが、いいのだ、こういうものは心情の問題なのだから。
兄の手を元の位置に戻し、陶器のポットに手を伸ばす。一つのカップに紅茶を注いで口を付けた。恐らく健康に良いとかその辺りのハーブティだ。その内兄が起きると見込んだのだろう。
あまり良くない顔色にまだ暫く休んでいて欲しいとも思うが、寝顔は昨夜でもう見飽きた。早くその瞼を開いて氷色の瞳を見せてくれないものか。起こしはしないけれども、そう思いながら音を立てないようワゴンにそっとカップを置いた。
勝手に名前付けてスミマセン。執事さん→大門(東映アニメのそっくりキャラより)、コミック九巻のメイドさん→磯坂(磯野、河豚田に続いて)にしてしまいました。詳しい妄想は大人モク瀬人同盟100の質問回答例に置いてあります。
で、号数、本当は金属製のサイズを測る道具があって、その方が正確に測れるわけですが。指輪のサイズを測りたいから用意してくれとはちょっと言えずに古典的手法へ走った模様ですよ。