The Date on Xmas 遊星×ジャック
 あと三時間ほどで今年の役目を終えるクリスマスツリーは、片付けられる前最後の点灯をされ、きらきら光を放っている。
「あー、片付けるの勿体無いよぉ。ずっと出してちゃ駄目?」
 ラリーの訴えに、やめておけとジャックが答える。
「えーっ、何でー?」
「有り難味が減る。来年のクリスマスに、仕舞っていたツリーを出す楽しみを無くしたいか?」
「うぅ……」
 二人のやり取りにナーヴたちが忍び笑いを漏らした。くく、と三人分の声が重なる。
「ジャック、来年の話をすると鬼が笑うぞ」
「鬼が何だ、勝手に笑わせておけ」
 確かに、差し当たっては来年のクリスマスより目前の年越しが重要だがな。ジャックが言うと、三人は忍び笑いを溜息に変え頭を抱えた。年越しは、色々なものの清算時期である。例えばツケ、例えば借りもの。
「ヤベェんだよ……オレ年越せないかも」
「オレも」
「オレもだよ」
 再生工場の賃金はあまりよろしくないのだ。ツケでなんか飲むからだ馬鹿めとジャックが辛辣な言葉を吐く。
 もーぉいーくつ寝ーるーとぉ、おーしょぉがぁつー。項垂れる三人の横で、ラリーが陽気なメロディを歌った。



The Date on Xmas 表遊戯×瀬人
「あ、そうだ。海馬君にメールしとこう」
 寝るつもりでベッドに入った遊戯だったが、ふと思い立ち枕元に放っていた携帯のメール作成画面を出した。うつ伏せになって枕の上でカチカチとボタンを押す。
「うんと……昨日は楽しかったね、かな……あ、そうだ、海馬君が選ぶの手伝ってくれたお土産が母さんに好評だったっていうのも言っておかないと。腰大丈夫だったのかも気になるけど、これ聞いたら怒るよね……あ、朝の謝った方がいいのかなぁ」
 ああでもないこうでもないと文面を練り、遊戯はメールを完成させた。送信ボタンを押して力尽きる。返信は割りにすぐ届いたが、欠伸一つを最後に、遊戯はもう寝入っていた。

Time: 12/25 22:46
From: 海馬瀬人
Subject: Re:おやすみ
謝るくらいなら端からするな。この痴れ者が。
土産は喜ばれたようで何よりだ。



The Date on Xmas 大人モクバ×ドミネーゼ瀬人
「あの、本当に良かったんですか?」
 つるつる滑るパジャマを着て天蓋ベッドに横たわりながら、静香は隣で寝そべる瀬人にそう尋ねた。ベッドには勿論、部屋にも、今は二人しかいない。クリスマスだったのに、と、先を続ける。
「そういうのは、昨日の内に済ませている」
「でも、やっぱり私、お邪魔だったんじゃ」
 一緒に寝る、と瀬人が言った時のモクバの反応は芳しくなかった。尤もその理由は瀬人が言うところの『ガールズトーク』の中身を警戒してのことなのだが、静香にその違いは判らない。やっぱり邪魔よねぇと思うだけだ。
「まぁ、気にする必要は無いさ。だいたい、そんなのはいつでもできることだからな」
 特にクリスマスだからという理由を付けずとも。外泊が困難で滅多と一つ屋根の下に在れないカップルというわけでもない。毎日同じ家に寝起きしているのだから。
「海馬さん余裕だぁ……」
「余裕だとも。それよりも、だ」
 瀬人の指が静香の脇腹を摘んだ。むに。聞こえない筈の音が二人の脳裏をよぎる。
「な、何するんですか、もう!」
「こんなものか……おい、オレのも摘んでみてくれ」
「えぇ?」
 今度は、静香の指が瀬人の脇腹を摘む。うに。やはり聞こえない筈の音が聞こえた。
「どう思う」
「どうって、ええと、普通? ですよね?」
「ちょっと付き過ぎじゃないか?」
 何を、とは言わない。肉だ。言わずとも、女同士ならば通じるものである。
 ダイエットだの何だの、二人の会話に花が咲く。フランス式ダイエットに言及している辺り、モクバの警戒は実に正しかったということだ。



The Date on Xmas ヤンキー城之内君×緑瀬人
 そろそろ寝ようかと寝台へ向かい、その途中で海馬は足を止めた。取り敢えずと床に置いていた、城之内プレゼントの鰐がこちらを見ている。
「……可愛い、ねぇ」
 フェルトで出来た大きなギザギザの歯や下がり気味の目は、城之内が言っていた通り間抜け面で愛嬌がある。純粋に可愛いというかは別だが。
 鰐の目は、じっと海馬を見ている。少し情けなさを感じる視線だ。
「まぁ、可愛いといえば可愛いかもね」
 海馬は鰐に近付いて腰を曲げた。首根っこを掴み、持ち上げる。鰐の顔と海馬の顔が同じ高さにくると、先の曲がった鰐の尻尾が海馬の足を叩いた。
 そのまま、鰐を抱えて海馬は歩き出した。鰐と一緒に天蓋の中へ入り、布団に潜る。
「あぁ、結構、いいサイズかな」
 抱き枕として。安価なプライズ品らしく緩い詰まり具合の綿も、すぐ分離しそうではあるが抱えやすくていい。
「おやすみ」
 横向けにし、鰐の頬に頬をくっ付けて海馬は目を瞑った。