「あ」
冷蔵庫の前に座り込んでいたラリーと、ジャックの目が合った。暫く見合って、ラリーが根負けする。だって、と彼は言いわけを始めた。
「だってさ、帰ってくるの遅いんだもん。待ってようと思ったのに」
「それで菓子を摘み食いか。先に食べてればよかっただろう。飯を」
バタークリームの入ったボウルを抱え、パンを銜えたままラリーが頬を膨らます。
「何だ」
「一人で食べても詰まんないよーだ」
「一人? あぁ、遊星もまだなのか。マーサのところの方が近いだろうに」
しょうのない奴だなと呟きながら、ラリーの向かいにジャックが腰を下ろす。
「ジャック?」
「オレにもパンを一枚寄越せ」
出された手に、脇に置いていたパンを一枚ラリーが差し向ける。ジャックはそれを取り、ボウルのスプーンでクリームを掬うとパンの上に落とした。
「え、ご飯じゃなくていいの?」
「一人で食べても詰まらないんだろうが」
言いながらジャックはパンを齧った。対面には、きょとんと不思議そうな顔をしたラリーがいる。今ここにいるのは、一人ではない。
「遊星、が」
説明させるなとでも言いたげに、ジャックはじと目でラリーを睨んだ。