注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
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※七夕企画です。詳細は7/6付けの記事をご覧下さい。


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 ぽつぽつと降り出した雨は、モクバが最後の仕事を終え会場を出た時には、頭を抱えたくなるような大雨に発展していた。バケツを引っ繰り返したような、とはまさにこの状況を差すためにある。傘を叩く雨の音は、まるで雹でも降っているかのようだ。
「ちょっとこの雨酷過ぎじゃない?」
「ですね。関西一帯大雨みたいです」
 答えた社員が、携帯を開き降水情報を調べる。そして、彼は実に申しわけ無さそうに言い辛そうに、もう一度口を開いた。
「関西から関東への新幹線、雨によるレール不具合で運行中止のようなんですが……」
 それは申しわけ無くもなるだろう。今日一日、どうにも帰りたくて帰りたくて仕方ない様子のモクバを案内していた身としては。
「……本当に?」
「はい」
 嘘だぁ、とモクバが天を仰ぐ。復旧を待っていては確実に明日だ。
「残念ですが、今日は近くにビジネスホテルがあるのでそこにでも泊まられるしか」
「ああ、うん、そうだね……ビジネスホテルってどこ……?」
「あそこの、かささぎ橋の向こう、右手に」
 小さなビルが示される。確認して、モクバは男に案内はここまでで充分だと告げた。彼だって、雨の中歩き続けるよりさっさと家に帰りたいだろう。
 社員と別れて、モクバは携帯を取り出した。短縮一番、瀬人の携帯へ掛ける。ワンコールでそれは繋がった。
『なんだ、もう終わったのか。予定より早かったな』
「そう? あー、進行そういえばちょっと早かったかも。それで、さぁ」
『帰って来れないんだろう』
 言いよどんだ言葉の先を、あっさりと瀬人が続ける。うん、と力無くモクバが答えた。
『それで、今はどこにいるんだ。もう会場は出たのか?』
「あー、ええとね、枚方? だっけ? そこの駅の近くの、ビジネスホテルに向かってるところ」
『そうか。……あぁ、橋のところか?』
 言い当てられ、モクバが面食らったような声を上げる。
「兄サマ地図見てるの?」
『いや』
 ぶつりと通話が切れた。ツーツーと機械音を立てる携帯を手にモクバが立ち尽くす。しかし、それも一瞬のことだ。
「おい」
 後ろから掛けられた声に勢いよく振り向く。
「っ、傘を揺らすな、水が掛かる」
「え、ええ、兄サマ? 何でいるの!?」
 むっと眉を寄せた瀬人がそこにいて、降りかかった雨水を払いながら、いては悪いかと呟いている。モクバは三度、何で、と繰り返した。
「開発室の問題が早くに片付いたから来てやったんだろうが。待っていたのでは今日中に間に合うかどうか怪しかったからな」
「え、でも新幹線止まってるんじゃ」
「止まったのは関西発の列車だけだ。向こうからこっちに来る分は問題無い」
 得意気に鼻を鳴らす様は間違い無く瀬人本人である。とうとう幻覚でも見えたかなという考えを、モクバは振り払った。
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