古代エジプトの数学。ただの数としての分数は普通に数字（10で桁上がり、0無し、notアラビア数字系）で書くのですが、体積ヘカトの分数は上図のようにウジャトの眼をバラバラ分解したパーツを使って表します。目頭側の白目、目玉、眉、目尻側の白目、眼の下の模様の先がくるんとしてる方、眼の下の模様の棒みたいな方、これらがそれぞれ1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64になるのです。
　で、ここでちょっと面白いことがあります。ウジャトをバラバラ分解したパーツを寄せ集めると、当然ウジャトになります。ウジャトはホルスの左眼で、セトとの戦いで傷付けられたのをトトが治したものです（ウジャトは「癒された」「完全な」などの意味を持つ）。しかしウジャトの各パーツを足し算してみてください。答は63/64、完全には1/64足りないのです。
　トトは月に関わりのある神なので、この欠けたままの1/64は月の出ない新月の晩を表しているのではないかと言う話もあります。しかし神々の間ではトトが意図的に1/64の存在を隠したというのが定説のようで、トトはそのことで糾弾されていたりします。自分以外が数学の秘密（＝宇宙の真理）を理解できないようにわざと知識の一部を隠し不完全な状態にしたんだろう、という感じの糾弾ですね。
　ホルスの眼を癒して完全な眼ウジャトと呼びながら、実際は不完全な眼の状態までしか癒していない・・・トトは何企んでるんでしょうか。やっぱり自分以外が真理を理解しないように、即ち自分だけが完全を知る神として優位に立つために、なんでしょうか。トトはホルスとセトの戦いでも中立的な立場にいてどちらかの眷属に組み込まれることも無く独自の信仰を保ちました。ホルスを癒し、しかし完全にそちらに寄りはしない・・・なかなかに権謀術数の香りがします。


　拍手有り難う御座いました！　諸々準備中ですがやはりよい略称が思い浮かびませんファラセト系・・・