注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
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 クリスマス企画です。初めにクリスマスお知らせをご覧下さい。

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 さて本題は海馬瀬人の話である。海馬瀬人は、オカルト嫌いの割りに、アテムが不思議な力で現世に留まっていた痕跡を消し去らなかった。冥界の扉の件から幾年も、アテムの功績は残され続けた。それはアテムの名ではなく彼の依り代であった少年の名で残ったものだが、同時に、功績を真に残したのは古代エジプト王の魂なのだという噂が伝説になっていくのを、海馬瀬人は止めなかった。オカルト主義の噂は時に彼を巻き込んで、彼に神官の魂だのなんだのが宿っていると噂したが、彼はそれも止めなかった。二人を一纏めに伝説の決闘者と呼ぶ向きもあったが、彼はそれも許容していた。
 だが、しかし、彼は非道のものであった。少しばかりの許容は、彼が寛容であることを示すものさしにはならなかった。海馬瀬人は、強欲で傲慢で貪欲な青年だった。何と組み合わせても融合素材にならないカードのように扱い辛く、結束を拒み、人付き合いの嫌いな、閉じた貝のごとく孤独な男であった。彼の身の内の冷気は彼の整い過ぎた顔付きを凍らせ、その高い鼻を澄まし返らせ、その頬を翳らせて、足取りを荒々しくした。また、瞳を石のようにし、薄い唇をどす暗く沈ませた。酷薄な声の調子にも、冷気が滲み出ていた。皮膚の白さは凍った霜が降り積もっているようであった。彼はいつでも自分の低い体温を改めなかった。どんな夏の日にも彼自身を打ち解けさせることは無かった。
 外の暑さも寒さも海馬瀬人には然したる影響を与えなかった。どんな陽気も彼を温めるに至らず、どんな寒空も彼を冷えさせられなかった。彼より厳しく吹く風も彼より一心不乱に降る雪も無く、どれほど土砂降りの雨であろうと彼よりは情け深かった。いかなる自然の力も彼に比べれば穏やかで、或いは一瞬の内に過ぎ去るだけのものであった。
 彼は、強欲の成果か、若いなりに一企業の社長なぞをやっていたが、彼が自社の廊下を歩いても、彼を呼び留め嬉しそうに挨拶をするものはいなかった。取引先も、彼の顔色を窺うことはあれ甘い答を期待した問いを口に出すことはなかった。子供にはまだ慕われる性質だったが、それすら、年々、慕う子供の数は減っていた。
 だが、そのようなことの何を海馬瀬人が気に掛けようか。くだらない人の情など、彼は元より願い下げであった。人生を道に例えるなら、人ごみを押し分け人を薙ぎ倒しながらでも己の行き先を確保すること、それこそが彼のしたいことであった。
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