注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
クリスマス企画です。初めにクリスマスお知らせをご覧下さい。
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「メリークリスマス、兄サマ!」
一つの明るい声がそう叫んだ。それは海馬瀬人の弟の声であった。彼の弟海馬モクバは、兄が工場の視察に行っていると聞いて予定を変えここへ立ち寄ったもので、海馬瀬人はその声で初めて弟が来たことに気付いたくらいだった。
「何を馬鹿馬鹿しいことを」
瀬人がモクバに向かって言った。
彼は、寒い中を駆けて来たので、身体は温まり、血色が良くなっていた。無論、彼とは弟モクバのことである。青年期に差し掛かり肉の落ちた頬や鼻を、まるで子供に戻ったかのように赤くして、白い息をふうと吐いていた。
「クリスマスが馬鹿馬鹿しいって?」
モクバが大仰に驚いた様子を見せる。
「まさか、玩具会社の社長がそんなこと言うつもり?」
「その通りだ。メリークリスマスなどと、玩具会社や外食産業の作ったブームに乗せられてどうする。乗せる側の人間が」
「けどさぁ」
明るさを失わない様子でモクバは続けた。
「だからって、辛気臭いクリスマスを送らなくたっていいじゃない。ちょっとやそっとブームに乗せられて踊っても問題無いくらいの準備はあるんだから」
それはその通りで、贅沢でもなんでも、クリスマスに限らずとも、できるだけの資産を彼は持っていた。だが瀬人は、再び、何を馬鹿馬鹿しいと、繰り返した。
「兄サマ、何をそんなに不機嫌になってるのさ」
「不機嫌にもなる。誰も彼もクリスマスだ何だと浮かれて、心を浮かれさせているだけならまだしも、手元まで浮かれさせているのではな。今日のラインの生産率を見ろ。それに、お前とて、メリークリスマスの一言のために仕事を中断しここに来たのだろうが」
瀬人は大きく溜息を吐いた。
「メリークリスマスと祝いたいのなら勝手に祝え。パーティでも開けばお前の友人やメイドたちは喜ぶだろうさ。そうすればオレもオレのやり方でクリスマスを祝うまでだ」
「全く祝ってるようには見えないけど」
モクバは肩を竦め、それから、諦めの混じった声で言った。
「まあいいや。明日だけど、皆呼んでのパーティはやるよ。だから、気が向いたら娯楽室に来て」
そうは言ったものの、きっと来ないだろうとは予測の付くことだったので、モクバはもう一度念を押すようにクリスマスの祝辞を述べた。
「メリークリスマス、家にくらいは帰ってきてよね」
彼の弟は出て行く時に工場の作業員たちにもメリークリスマスと声を掛けた。作業員たちは皆身体こそ冷え切っていたが、心は温かさを保っていた。というのも、誰も、メリークリスマスなんて馬鹿馬鹿しいとは言わず、丁寧な挨拶を返したのだ。
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「メリークリスマス、兄サマ!」
一つの明るい声がそう叫んだ。それは海馬瀬人の弟の声であった。彼の弟海馬モクバは、兄が工場の視察に行っていると聞いて予定を変えここへ立ち寄ったもので、海馬瀬人はその声で初めて弟が来たことに気付いたくらいだった。
「何を馬鹿馬鹿しいことを」
瀬人がモクバに向かって言った。
彼は、寒い中を駆けて来たので、身体は温まり、血色が良くなっていた。無論、彼とは弟モクバのことである。青年期に差し掛かり肉の落ちた頬や鼻を、まるで子供に戻ったかのように赤くして、白い息をふうと吐いていた。
「クリスマスが馬鹿馬鹿しいって?」
モクバが大仰に驚いた様子を見せる。
「まさか、玩具会社の社長がそんなこと言うつもり?」
「その通りだ。メリークリスマスなどと、玩具会社や外食産業の作ったブームに乗せられてどうする。乗せる側の人間が」
「けどさぁ」
明るさを失わない様子でモクバは続けた。
「だからって、辛気臭いクリスマスを送らなくたっていいじゃない。ちょっとやそっとブームに乗せられて踊っても問題無いくらいの準備はあるんだから」
それはその通りで、贅沢でもなんでも、クリスマスに限らずとも、できるだけの資産を彼は持っていた。だが瀬人は、再び、何を馬鹿馬鹿しいと、繰り返した。
「兄サマ、何をそんなに不機嫌になってるのさ」
「不機嫌にもなる。誰も彼もクリスマスだ何だと浮かれて、心を浮かれさせているだけならまだしも、手元まで浮かれさせているのではな。今日のラインの生産率を見ろ。それに、お前とて、メリークリスマスの一言のために仕事を中断しここに来たのだろうが」
瀬人は大きく溜息を吐いた。
「メリークリスマスと祝いたいのなら勝手に祝え。パーティでも開けばお前の友人やメイドたちは喜ぶだろうさ。そうすればオレもオレのやり方でクリスマスを祝うまでだ」
「全く祝ってるようには見えないけど」
モクバは肩を竦め、それから、諦めの混じった声で言った。
「まあいいや。明日だけど、皆呼んでのパーティはやるよ。だから、気が向いたら娯楽室に来て」
そうは言ったものの、きっと来ないだろうとは予測の付くことだったので、モクバはもう一度念を押すようにクリスマスの祝辞を述べた。
「メリークリスマス、家にくらいは帰ってきてよね」
彼の弟は出て行く時に工場の作業員たちにもメリークリスマスと声を掛けた。作業員たちは皆身体こそ冷え切っていたが、心は温かさを保っていた。というのも、誰も、メリークリスマスなんて馬鹿馬鹿しいとは言わず、丁寧な挨拶を返したのだ。
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