注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
クリスマス企画です。初めにクリスマスお知らせをご覧下さい。
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そうする内、作業員の一人が客を連れ事務室にやってきた。二人連れの男は、見るからに慈善家然とした、恰幅のいい紳士たちであった。事務室にやってきた彼らは脱いだコートを手に瀬人へお辞儀をした。
「海馬社長で御座いますね。伝説の決闘者の片翼だと、兼ねてより雑誌などでお顔を拝見しておりました」
一人が、手帳を開きながらそう言った。
「もう引退して十年になりますが。御用は?」
「いやはや、急な訪問で失礼致しました」
もう一人が名刺を差し出した。それを机の端に置いて、瀬人は、全く、と言葉を返した。
「お忙しいところかとは思ったのですが、クリスマスという機会に当たりまして」
手帳を開いていた方の紳士が、ペンを手にした。
「目下クリスマスも年越しも祝う用意の無い人々のため、援助のお願いに各種企業を回っているところで御座います。この時世ですから、回れる先も限られてはいるのですが」
「では」
瀬人は男たちに尋ねた。
「公共の支援所は無いのでしたか」
「いえ、幾らもありますよ」
「民間の炊き出しは、あれは今年も?」
「やっておりますよ、今年も。やる必要が無くなったと申し上げたいところですが」
「社会保障の、なんでしたか、あの法も充分に活用されていると?」
「ええ、ええ、勿論。活用の支援もしております」
そこまで聞いて、瀬人は小さく笑い声を上げた。
「それは良かった。貴方々が初めに言われたことからして、何かそういうことごとの有益な運用を阻害するようなことが起こったのではないかと無用な心配をしてしまいました」
紳士たちは、鼻白んだ様子を隠して言い募った。
「それだけでは、やはり、足りぬことも御座いますから。御社には、特に子供たちへの資金援助をお願いしたいと思っているのです。それで、ご寄付は幾らと致しましょうか」
皆無、と、瀬人は答えた。
「匿名をお望みでしょうか?」
「何を仰る。今言ったことを聞いておられましたか? 皆無と言ったのです。クリスマスという機会に、私はなんの感慨も得ていない。自分すら愉快で無いこの季節に、他人を愉快にしている暇など。それに、先に上げたものの維持にならば、私は随分と出したものです。まずはそこを活用して頂きたい。話は以上でしょうか?」
瀬人はそういうと扉の傍で所在無さ気にしていた作業員を呼び付けた。
「お客様がお帰りだ。門まで送って差し上げろ」
二人の紳士が、どう言っても自分たちの主張が通らないと見て取ったものか、大人しく引き下がる。作業員が気の毒そうな表情で彼らを連れて行くと、瀬人は再び仕事に取り掛かった。
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そうする内、作業員の一人が客を連れ事務室にやってきた。二人連れの男は、見るからに慈善家然とした、恰幅のいい紳士たちであった。事務室にやってきた彼らは脱いだコートを手に瀬人へお辞儀をした。
「海馬社長で御座いますね。伝説の決闘者の片翼だと、兼ねてより雑誌などでお顔を拝見しておりました」
一人が、手帳を開きながらそう言った。
「もう引退して十年になりますが。御用は?」
「いやはや、急な訪問で失礼致しました」
もう一人が名刺を差し出した。それを机の端に置いて、瀬人は、全く、と言葉を返した。
「お忙しいところかとは思ったのですが、クリスマスという機会に当たりまして」
手帳を開いていた方の紳士が、ペンを手にした。
「目下クリスマスも年越しも祝う用意の無い人々のため、援助のお願いに各種企業を回っているところで御座います。この時世ですから、回れる先も限られてはいるのですが」
「では」
瀬人は男たちに尋ねた。
「公共の支援所は無いのでしたか」
「いえ、幾らもありますよ」
「民間の炊き出しは、あれは今年も?」
「やっておりますよ、今年も。やる必要が無くなったと申し上げたいところですが」
「社会保障の、なんでしたか、あの法も充分に活用されていると?」
「ええ、ええ、勿論。活用の支援もしております」
そこまで聞いて、瀬人は小さく笑い声を上げた。
「それは良かった。貴方々が初めに言われたことからして、何かそういうことごとの有益な運用を阻害するようなことが起こったのではないかと無用な心配をしてしまいました」
紳士たちは、鼻白んだ様子を隠して言い募った。
「それだけでは、やはり、足りぬことも御座いますから。御社には、特に子供たちへの資金援助をお願いしたいと思っているのです。それで、ご寄付は幾らと致しましょうか」
皆無、と、瀬人は答えた。
「匿名をお望みでしょうか?」
「何を仰る。今言ったことを聞いておられましたか? 皆無と言ったのです。クリスマスという機会に、私はなんの感慨も得ていない。自分すら愉快で無いこの季節に、他人を愉快にしている暇など。それに、先に上げたものの維持にならば、私は随分と出したものです。まずはそこを活用して頂きたい。話は以上でしょうか?」
瀬人はそういうと扉の傍で所在無さ気にしていた作業員を呼び付けた。
「お客様がお帰りだ。門まで送って差し上げろ」
二人の紳士が、どう言っても自分たちの主張が通らないと見て取ったものか、大人しく引き下がる。作業員が気の毒そうな表情で彼らを連れて行くと、瀬人は再び仕事に取り掛かった。
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