注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
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 知った顔であった。紛れも無く、見知った顔であった。いや、見知った表情であった。顔貌そのものは、似ていたが、違う顔であった。頬が幾分硬そうになり、皮膚の色も変わっている。いつもの学生服とチョーカーではなく、熱い国の民族衣装のような服と黄金の胸飾りを着けた、古代エジプトの王であった。引き摺られていたのはやはり鎖で、それは彼の腰の辺りに絡み付いていた。長い鎖はちょうど蛇のように床にのたうっている。それは――瀬人はそれをこと細かに観察してみたのだが――二つの冠や、背の高い金の椅子や、同じ眼の意匠を持つ七つの宝具を括り付けていた。アテムの身体は透き通っていて、そうした鎖の巻き付いている様がよく見えた。
 瀬人は、幽霊と言うのだろう彼の姿をまじまじと見て、それがそこに存在しているのだとは解っていたが、その地獄の業火のような色の瞳のぞっとさせる感覚にも気付いていたが、それでもこのことを信じ切れなくて、自分の目や頭を疑おうとした。
「なんだというのだ」
 声を発すれば幻覚など消え去るのではないかという彼の期待は裏切られた。
「なんだというのだ。なんの用があるというのだ」
「さて。用ならたくさんあるぜ」
 知った声だった。間違い無く。
「貴様は、誰、だ」
「オレの名前を教えて、お前は解るのか?」
「解らないと思うなら解るように名乗れ!」
 瀬人が声を高く張り上げる。
「霊だろうと、それが最低限のマナーだ」
 彼は初め「霊だろうとそれが最低限の礼だ」と言おうとしたのだが、この状況に一層相応しいよう言葉を取り替えてそう続けた。
「現世にいた間、お前の前では、武藤遊戯と名乗っていたぜ。本当の名前はアテムだったんだが、誰か、その事実をお前に伝えたか?」
「始めて聞いたな」
「そうか。ところで、やっと非ぃカガク的とかいうものの存在を認める気になったのか?」
 瀬人の短い気に限界が訪れた。
「その減らず口を閉じて出て行け」
「酷いじゃないか。それが客への態度かよ」
「客なら客らしくそこの椅子にでも座っていろ! ……座れるのなら」
 瀬人が言い足したのは、こんな透き通った幽霊でもすり抜けずに現実の椅子になど腰掛けられるものなのか、どうにも解らなかったからである。だが、この霊はその言いようを然して気にした風でもなく、瀬人が指した猫足の椅子に腰を下ろした。
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