注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
クリスマス企画です。初めにクリスマスお知らせをご覧下さい。
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娯楽室へ移った人々はそこへ用意されていた暖かな飲みものに喜んで手を付けた。人々は湯気を立てるグリューヴァインのカップを両手に包み、その香気を存分に吸い込んだ。シナモンや柑橘類のピールの清々しさと、砂糖や林檎の甘さが混ざり合った、アルコールの蒸気が、彼らを良い気分にさせる。
「こういうの飲むとクリスマスなんだって思うわ」
「今日は皆揃えて良かったよ。城之内君は無理かもって言ってたけど、なんとかなったんだ?」
「なんとか。本当になんとか、な。しこたま嫌味を言われたぜ」
瀬人の工場の作業員だった一人が溜息混じりに言った。
「クリスマスの土曜に、急にだぜ、工場稼動させろなんて言う奴がいるかよ。ここにも来やしねぇし、おもちゃ会社なんてやってるくせ、クリスマスを楽しみにしてる人間の気持ちをこれっぽっちも理解してねぇのはどうなんだよ」
その場の全員が困ったように顔を見合わせた。その中で、作業員の彼は手にしていたコップを高く掲げた。
「あの情緒の欠片も無い野郎がもったいぶって休みにしてくれたクリスマスに乾杯!」
「おいおい。モクバの前でそんな言い方すんなって」
「んだよ、ここに来ねぇってことはモクバの誘いだって断ってんだろ。モクバだって怒っていいトコじゃねぇの」
水を向けられた瀬人の弟が肩を竦める。
「兄サマは、クリスマスなんて馬鹿らしいってさ。そういう風に思ってるんだ。確かにあちらこちらから下らないパーティの誘いが来るのもクリスマスならではの行事だけど」
「だからって、自宅でやるパーティまで馬鹿らしいなんて言うのは良くないわ」
と、今のところ紅一点の客人が腹立たしげに息を吐いた。こういう女性方は、愛すべきかな、中途半端など許さぬほどに、いつでも大真面目である。
彼女は非常に可愛らしかった。紅一点の彼女が誰の夫人でも無いことが不思議なくらいに――尤も、代わりに彼女と彼らは非常な友情に結ばれているのだが――可愛らしかった。怒りに膨らませた頬は林檎のようで、尖らせた唇は花びらのような、愛らしい女性であった。快活で、晴れやかな気性の女性だった。しかし世話女房的な、もしも彼女が誰かの夫人になることがあったとすればたちまち夫を尻に敷いてしまうだろうような、どこまでも世話女房的な女性であった。
「まあ、良くはないんだろうけど」
瀬人の弟は言った。
「怒ればいいのよ。我慢すること無いわ」
周りの男たちも二、三頷いた。
「我慢してるってわけでも無いんだよ。来て欲しいとは思うけどね。怒ろうにもさ、兄サマがああだってことで大層な目に遭ってるのは兄サマ自身だもの。例えば、兄サマはなんらかの理由でここに来たく無いと思った。大方、馴れ合いは御免だとか、そんなことだろうと思うよ。で、その結果は? オレたちはこうしてパーティを開いて今も美味しいグリューヴァインなんかを飲んでる。当初の予定と変わりなく」
「今日のご馳走にあり付けないのは海馬君の方だってこと?」
「それだけでは無いとも思うけど、とても解りやすく言うならそういうことだよ」
瀬人の弟は残っていたグリューヴァインを飲んでしまうとコップを置いて言った。
「つまり、兄サマがこういう集まりを嫌って、ここに来ない結果はさ。オレが思うには、兄サマに全く不利益をもたらさない快適で愉快な時間を兄サマが失ったということなんだ。こういうのが嫌いだって言うなら、無理矢理引っ張ってきたりまではしないよ。だけど勿体無いよね。こういう場に来てみる前から自分はこういうのを嫌いなんだって決め付けてるのは」
それは全くなことだった。あの世話好きの女性も納得顔で頷く。
「だから、オレは毎年誘うんだよ。ひょっとすると兄サマは死ぬまでクリスマスなんて馬鹿らしいって言ってるかもしれない。けど、何の拍子にちょっと顔を出してみようかって気になって、その上パーティを楽しむなんてことになってくれるか分からないからさ。パーティをするからどう? ってね。それで、ちょっとでもクリスマスを楽しむ気になって、城之内が訴えるまでも無くクリスマスの土曜日は工場を閉めて当たり前だって思うようになればさ」
瀬人の弟はそう言うと、ちょっとの間を置いて、もしかすると今日だってこれからここにやってくるかもしれない、と付け足した。他の面々がまさかと笑って彼の開いたコップにヴァインを継ぎ足す。それから彼らはゲームなぞをやって他の参加者が来るまでの暇潰しを始めた。
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娯楽室へ移った人々はそこへ用意されていた暖かな飲みものに喜んで手を付けた。人々は湯気を立てるグリューヴァインのカップを両手に包み、その香気を存分に吸い込んだ。シナモンや柑橘類のピールの清々しさと、砂糖や林檎の甘さが混ざり合った、アルコールの蒸気が、彼らを良い気分にさせる。
「こういうの飲むとクリスマスなんだって思うわ」
「今日は皆揃えて良かったよ。城之内君は無理かもって言ってたけど、なんとかなったんだ?」
「なんとか。本当になんとか、な。しこたま嫌味を言われたぜ」
瀬人の工場の作業員だった一人が溜息混じりに言った。
「クリスマスの土曜に、急にだぜ、工場稼動させろなんて言う奴がいるかよ。ここにも来やしねぇし、おもちゃ会社なんてやってるくせ、クリスマスを楽しみにしてる人間の気持ちをこれっぽっちも理解してねぇのはどうなんだよ」
その場の全員が困ったように顔を見合わせた。その中で、作業員の彼は手にしていたコップを高く掲げた。
「あの情緒の欠片も無い野郎がもったいぶって休みにしてくれたクリスマスに乾杯!」
「おいおい。モクバの前でそんな言い方すんなって」
「んだよ、ここに来ねぇってことはモクバの誘いだって断ってんだろ。モクバだって怒っていいトコじゃねぇの」
水を向けられた瀬人の弟が肩を竦める。
「兄サマは、クリスマスなんて馬鹿らしいってさ。そういう風に思ってるんだ。確かにあちらこちらから下らないパーティの誘いが来るのもクリスマスならではの行事だけど」
「だからって、自宅でやるパーティまで馬鹿らしいなんて言うのは良くないわ」
と、今のところ紅一点の客人が腹立たしげに息を吐いた。こういう女性方は、愛すべきかな、中途半端など許さぬほどに、いつでも大真面目である。
彼女は非常に可愛らしかった。紅一点の彼女が誰の夫人でも無いことが不思議なくらいに――尤も、代わりに彼女と彼らは非常な友情に結ばれているのだが――可愛らしかった。怒りに膨らませた頬は林檎のようで、尖らせた唇は花びらのような、愛らしい女性であった。快活で、晴れやかな気性の女性だった。しかし世話女房的な、もしも彼女が誰かの夫人になることがあったとすればたちまち夫を尻に敷いてしまうだろうような、どこまでも世話女房的な女性であった。
「まあ、良くはないんだろうけど」
瀬人の弟は言った。
「怒ればいいのよ。我慢すること無いわ」
周りの男たちも二、三頷いた。
「我慢してるってわけでも無いんだよ。来て欲しいとは思うけどね。怒ろうにもさ、兄サマがああだってことで大層な目に遭ってるのは兄サマ自身だもの。例えば、兄サマはなんらかの理由でここに来たく無いと思った。大方、馴れ合いは御免だとか、そんなことだろうと思うよ。で、その結果は? オレたちはこうしてパーティを開いて今も美味しいグリューヴァインなんかを飲んでる。当初の予定と変わりなく」
「今日のご馳走にあり付けないのは海馬君の方だってこと?」
「それだけでは無いとも思うけど、とても解りやすく言うならそういうことだよ」
瀬人の弟は残っていたグリューヴァインを飲んでしまうとコップを置いて言った。
「つまり、兄サマがこういう集まりを嫌って、ここに来ない結果はさ。オレが思うには、兄サマに全く不利益をもたらさない快適で愉快な時間を兄サマが失ったということなんだ。こういうのが嫌いだって言うなら、無理矢理引っ張ってきたりまではしないよ。だけど勿体無いよね。こういう場に来てみる前から自分はこういうのを嫌いなんだって決め付けてるのは」
それは全くなことだった。あの世話好きの女性も納得顔で頷く。
「だから、オレは毎年誘うんだよ。ひょっとすると兄サマは死ぬまでクリスマスなんて馬鹿らしいって言ってるかもしれない。けど、何の拍子にちょっと顔を出してみようかって気になって、その上パーティを楽しむなんてことになってくれるか分からないからさ。パーティをするからどう? ってね。それで、ちょっとでもクリスマスを楽しむ気になって、城之内が訴えるまでも無くクリスマスの土曜日は工場を閉めて当たり前だって思うようになればさ」
瀬人の弟はそう言うと、ちょっとの間を置いて、もしかすると今日だってこれからここにやってくるかもしれない、と付け足した。他の面々がまさかと笑って彼の開いたコップにヴァインを継ぎ足す。それから彼らはゲームなぞをやって他の参加者が来るまでの暇潰しを始めた。
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