注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
クリスマス企画です。初めにクリスマスお知らせをご覧下さい。
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「ああ、清々した! 清々したよ!」
次に瀬人が見せられたのは、どこか病院の中らしかった。医者が、執刀器具を片付けながらそう叫んでいた。傍にいた別の医者も頷いて彼に同意を示す。
「しかし、良かったんですかね。勝手に臓器を取ったりしてしまって。提供カード無かったんでしょう」
「構うものか、ばれやしないよ。誰がそんなに注意深くあの人の遺体に瑕疵が無いか見るっていうんだ」
器具をすっかり片付けてしまった医者が、欠伸をしながら白衣をはたいた。
「それに、あんな人でも他人を幸せな気分にさせられるのだから、これまでの罪滅ぼしの機会を作ってやった私に、むしろ感謝して欲しいくらいさ」
違いないともう一人が笑った。瀬人が顔を顰める。だが、瀬人の姿は例によって人々には見えていない。
「不快だ。実に不快だ」
言った瀬人に、鳥の神はもう一度羽ばたきで風を送った。瀬人はその場から連れ出されたが、しかし、それは見ているのを不快だといった彼への親切心ではなかった。風がやんだ時、彼らは町外れに立っていた。彼らの目の前には鉄の門と、その奥に、夥しい石の群れがあった。
墓場。瀬人は薄々勘付いていたが、先ほどの憐れな死者はこの土の下に眠っていて、彼は今からその墓石に刻まれた名前を見ることになるのだった。鳥の神は鉄門の上を飛んでいったが、彼はそれを開け歩いて神を追った。
「一つ聞きたい」
鳥の神が止まった石からまだ少し離れた位置で、瀬人は言った。
「この世界は確たる未来か? それとも、予測図に過ぎないものか?」
神は答えなかった。この神は非常な無口であった。そして、問いながら、瀬人も返答を期待していたのではなかった。彼は元々運命論者ではなかったし、たとえ確たる未来だという返答があったとしても、見せられた未来ごときに従う気は無かった。
「人の行く道は人自身が定めるべきであって、運命だの神の力だのに定められてそれをよしとするのは愚かもののすることだ」
神は依然として何も言わない。瀬人はその黄金の鳥が羽を休める石に近付いた。そして嘴が指し示しているようにも見えるところに視線を向けて、冷たい色の石の上に、海馬瀬人、という自らの名を読んだ。
「解りきった答だったな」
彼は墓石の上の神を見上げて言った。
「古代エジプトにおいて、再生復活のためには臓器の保存も必要だった。それを古代人のように信じているわけではないが……信じる信じない以前に、どうでもいい話だ。オレはあのような最期は迎えん。臓器をどうこうするにしても、無断で摘出され、代わりとなるような詰めものもされず、そしてそれに誰も気付かないようなことにだけはならん」
やはり何も言わないまま、神はひと羽ばたきして墓石から足を離した。黄金の鳥は羽を身体に引き寄せて丸くなり、見る間に実際の球体になって、天体が終わりを迎えた時のように暗くなりながら縮み、ついには消えてしまった。
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「ああ、清々した! 清々したよ!」
次に瀬人が見せられたのは、どこか病院の中らしかった。医者が、執刀器具を片付けながらそう叫んでいた。傍にいた別の医者も頷いて彼に同意を示す。
「しかし、良かったんですかね。勝手に臓器を取ったりしてしまって。提供カード無かったんでしょう」
「構うものか、ばれやしないよ。誰がそんなに注意深くあの人の遺体に瑕疵が無いか見るっていうんだ」
器具をすっかり片付けてしまった医者が、欠伸をしながら白衣をはたいた。
「それに、あんな人でも他人を幸せな気分にさせられるのだから、これまでの罪滅ぼしの機会を作ってやった私に、むしろ感謝して欲しいくらいさ」
違いないともう一人が笑った。瀬人が顔を顰める。だが、瀬人の姿は例によって人々には見えていない。
「不快だ。実に不快だ」
言った瀬人に、鳥の神はもう一度羽ばたきで風を送った。瀬人はその場から連れ出されたが、しかし、それは見ているのを不快だといった彼への親切心ではなかった。風がやんだ時、彼らは町外れに立っていた。彼らの目の前には鉄の門と、その奥に、夥しい石の群れがあった。
墓場。瀬人は薄々勘付いていたが、先ほどの憐れな死者はこの土の下に眠っていて、彼は今からその墓石に刻まれた名前を見ることになるのだった。鳥の神は鉄門の上を飛んでいったが、彼はそれを開け歩いて神を追った。
「一つ聞きたい」
鳥の神が止まった石からまだ少し離れた位置で、瀬人は言った。
「この世界は確たる未来か? それとも、予測図に過ぎないものか?」
神は答えなかった。この神は非常な無口であった。そして、問いながら、瀬人も返答を期待していたのではなかった。彼は元々運命論者ではなかったし、たとえ確たる未来だという返答があったとしても、見せられた未来ごときに従う気は無かった。
「人の行く道は人自身が定めるべきであって、運命だの神の力だのに定められてそれをよしとするのは愚かもののすることだ」
神は依然として何も言わない。瀬人はその黄金の鳥が羽を休める石に近付いた。そして嘴が指し示しているようにも見えるところに視線を向けて、冷たい色の石の上に、海馬瀬人、という自らの名を読んだ。
「解りきった答だったな」
彼は墓石の上の神を見上げて言った。
「古代エジプトにおいて、再生復活のためには臓器の保存も必要だった。それを古代人のように信じているわけではないが……信じる信じない以前に、どうでもいい話だ。オレはあのような最期は迎えん。臓器をどうこうするにしても、無断で摘出され、代わりとなるような詰めものもされず、そしてそれに誰も気付かないようなことにだけはならん」
やはり何も言わないまま、神はひと羽ばたきして墓石から足を離した。黄金の鳥は羽を身体に引き寄せて丸くなり、見る間に実際の球体になって、天体が終わりを迎えた時のように暗くなりながら縮み、ついには消えてしまった。
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