注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
クリスマス企画です。初めにクリスマスお知らせをご覧下さい。
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通りは、行事好きの家々がそれぞれに施す門戸や庭の飾り付けでクリスマスの空気に溢れていた。緩やかな坂を下っていくと、中腹ほどにバス停があって、ちょうどバスがやってきていたところだった。そして、珍しくも、瀬人はそれに乗り込んだ。普段は運転手付きの車が彼の主な交通手段である。乗り合わせた中で彼を知る人々は、一様におかしな顔をした。
バスは、遠くまで行く路線のものだった。ごとごとと揺られながら、瀬人は窓の外を眺めていた。住宅の様子がしだいに移り変わっていくのを、面白く思った。その終点で無いところで彼は降りた。
「確か、こちらだった筈だが……」
少し歩くと、景色は僅かに見覚えのあるものになった。辺り一帯は再開発地区なのだったが、そこは元の建造物を残したままにされているようだった。通りを歩いていくと、突き当たりに、かつて瀬人のいた施設が見えた。
「どうした」
彼は塀の傍にしゃがみ込んで泣いている子供たちに声を掛けた。一番端にいた子供が、瀬人を見上げてぐずりと鼻を啜った。
「サンタクロースが来なかったんだ」
「皆いい子にしてたのに。普通のおうちじゃないからサンタさんに忘れられちゃったんだ」
それを聞いて彼が吐いた嘘は、間違い無く、これまで彼が吐いた中で最上の嘘だったろう。
「近頃はいい子が増えて、サンタも一日ではプレゼントを配りきれず、二十四の晩と二十五の晩に分けてプレゼントを配っているらしいぞ。今朝プレゼントが見付からなかったのなら、明日の朝に届いているのではないか?」
「本当に?」
小さな子供の集団は途端に元気になって飛び上がった。他の子供たちにも教えてやろうと集団は施設の中に駆け込んでいった。何ごとかと庭に出てきた大人に瀬人は声を掛けた。
「ここの職員か?」
彼女がはいと頷いたので、瀬人は続けて彼がいた頃の園長の名前を告げ、その人がいないかと聞いてみた。すると、幸いにも彼女はまだここの園長であった。先の職員が呼びにいって、暫くすると一人の老女が出てきた。彼女は瀬人を見て驚いた顔をした。
「長い間そうすることを忘れていましたが。世話になった恩を返したいと思った時、ここでは誰に話を通せば良いのですか」
彼はそう言ってから、解り辛かったかと思って、直截な言葉で同じ内容の言葉を繰り返した。
「寄付の受付窓口はどちらに?」
老女は一層驚いた顔になって彼にそれを説明した。クリスマスの奇跡だと彼女が謝辞を述べるのを遮って、クリスマスといえば、と瀬人はコートの内ポケットから革の財布を取り出した。
「取り急ぎ、サンタクロースにこれを」
入っていた紙幣を数枚抜き取り瀬人は言った。そして、できれば我が社の製品を宜しく、と付け足した。彼は、彼が彼の会社の経営を始める切っ掛けになった気持ちを思い出していた。彼の会社は玩具会社である。それは子供を喜ばせるためにあるものだ。
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通りは、行事好きの家々がそれぞれに施す門戸や庭の飾り付けでクリスマスの空気に溢れていた。緩やかな坂を下っていくと、中腹ほどにバス停があって、ちょうどバスがやってきていたところだった。そして、珍しくも、瀬人はそれに乗り込んだ。普段は運転手付きの車が彼の主な交通手段である。乗り合わせた中で彼を知る人々は、一様におかしな顔をした。
バスは、遠くまで行く路線のものだった。ごとごとと揺られながら、瀬人は窓の外を眺めていた。住宅の様子がしだいに移り変わっていくのを、面白く思った。その終点で無いところで彼は降りた。
「確か、こちらだった筈だが……」
少し歩くと、景色は僅かに見覚えのあるものになった。辺り一帯は再開発地区なのだったが、そこは元の建造物を残したままにされているようだった。通りを歩いていくと、突き当たりに、かつて瀬人のいた施設が見えた。
「どうした」
彼は塀の傍にしゃがみ込んで泣いている子供たちに声を掛けた。一番端にいた子供が、瀬人を見上げてぐずりと鼻を啜った。
「サンタクロースが来なかったんだ」
「皆いい子にしてたのに。普通のおうちじゃないからサンタさんに忘れられちゃったんだ」
それを聞いて彼が吐いた嘘は、間違い無く、これまで彼が吐いた中で最上の嘘だったろう。
「近頃はいい子が増えて、サンタも一日ではプレゼントを配りきれず、二十四の晩と二十五の晩に分けてプレゼントを配っているらしいぞ。今朝プレゼントが見付からなかったのなら、明日の朝に届いているのではないか?」
「本当に?」
小さな子供の集団は途端に元気になって飛び上がった。他の子供たちにも教えてやろうと集団は施設の中に駆け込んでいった。何ごとかと庭に出てきた大人に瀬人は声を掛けた。
「ここの職員か?」
彼女がはいと頷いたので、瀬人は続けて彼がいた頃の園長の名前を告げ、その人がいないかと聞いてみた。すると、幸いにも彼女はまだここの園長であった。先の職員が呼びにいって、暫くすると一人の老女が出てきた。彼女は瀬人を見て驚いた顔をした。
「長い間そうすることを忘れていましたが。世話になった恩を返したいと思った時、ここでは誰に話を通せば良いのですか」
彼はそう言ってから、解り辛かったかと思って、直截な言葉で同じ内容の言葉を繰り返した。
「寄付の受付窓口はどちらに?」
老女は一層驚いた顔になって彼にそれを説明した。クリスマスの奇跡だと彼女が謝辞を述べるのを遮って、クリスマスといえば、と瀬人はコートの内ポケットから革の財布を取り出した。
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入っていた紙幣を数枚抜き取り瀬人は言った。そして、できれば我が社の製品を宜しく、と付け足した。彼は、彼が彼の会社の経営を始める切っ掛けになった気持ちを思い出していた。彼の会社は玩具会社である。それは子供を喜ばせるためにあるものだ。
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