死者の書全章が読みたい。のですが、完全版は現在まだ発掘されていないので、無理です。
　その死者の書、死者の書は現代人が勝手に呼んでる名前で、実際は日の下に現れるための書といい冥界通行のための安全ガイドブックのようなものでした。冥界を通り抜けてイアル野にいくまでに待ち受けている試練をクリアするための呪文や神のご機嫌を取る文句が書き連ねられている文書でした。が、全章書くにはとても長いものだったらしく、庶民の殆どは自分に必要な章だけを買っていました。お金を出せば優秀で字の巧い神官がオーダーメイドの死者の書を作ってくれましたが、あとは章ごとにばら売りで自分の名前を入れるだけな既製品も売ってたようです。で、そんなんだったから全章残ってないわけです。
　様々な章の中に否定告白の章があるのですが、これがちょっと面白いです。死者が四十二柱の神々の前で、私は○○をしませんでした、と四十二の罪について否定しなければならないのですが、その否定の上手な仕方を収めた章です。冥界裁判用のカンペですね。もっとも、否定したところでマアトの天秤がごとっと傾いちゃったら終わりなんですが（心臓とマアトの羽を秤にかけるアレです）（シャーディが初期の頃に金森館長にやってました）。
　ごとっと傾くのが怖かったのか、墓に「私の心臓さん、頼むから冥界裁判で私の不利になるようなことはしないでね」と呪文を刻んだ人もいました。何に心当たりがあったのか知りませんが、必死です。
　必死といえば、オシリス神話を持ってお墓に入る人も多かったようです。ごとっと行っちゃった時に、でもでも神様貴方たちほど酷い罪は犯してないと思います！　と訴えるためだったとか何だとか。冥界裁判の仕切り役は人妻（妻＝妹の妹）と浮気して子供作ったのが原因でその夫（弟＝妹の弟）にバラバラにされ冥界に下ったオシリスなので、効果覿面だったでしょう。オシリス、ギリシャ神話のゼウスみたいなところがあると言えば分かりやすいでしょうか。ロクデナシです。
　そんなわけで古代エジプト人は皆死者の書もとい冥界通行のためのカンペ集を持ってお墓に入ったので、のちの人が死者の傍に必ずある文章＝死者の書と名付けたらしいです。安易なネーミングでした。


　拍手有り難う御座いました！　ファラオの食卓是非やってみて下さい。