注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
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※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


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「なー、なんかこれホストっぽくね?」
 ちょっと彼を見れるようにしてやってよ、という海馬の注文で最初に城之内が着せられたのは白いシャツにモスグリーンのスーツだった。そしてそこからああだこうだと細かい指定でとっかえひっかえ着せ替えが続き、現在城之内が来ているのは真っ赤な立て襟シャツにブラックスーツである。
「似合ってるじゃないのさ。キミ、ホスト顔だからねぇ。ガラが悪そうっていうか」
「どういう意味だよ」
「そのまんまの……あぁ、間違えた。悪そうなんじゃなくて悪いんだった」
 ガラの悪い文句を聞き流しつつ海馬が財布を開いた。出て来たカードに、うわブラックだ、今日は小切手じゃねーの、と城之内が声を上げる。
「最近小額の買い物多かったから、一々小切手切るの面倒になってカードに変えたんだ。あ、この服は着ていくから、他のをうちに回しといて」
 カードを受け取った店長が畏まって頭を下げる。
「お連れ様がお召しになって来られたお洋服はいかが致しましょうか」
「あぁ、あれ。どうする? 要るの?」
「要るに決まってんだろ。こんな服で普段の生活できるかよ。つか試着したの全部買うのかよ、試着の意味ねーじゃん」
「どれを今着ていくか決めたんだよ。それじゃ、着てきたのも一緒に届けてくれる?」
 返事をして、店長はカードをリーダーに通した。海馬にとっての小額、城之内にとっての大金が電子パネルに記されている。
「さて、服は買えたし、次の目的地に移動しようか。ちょっと時間掛かるけど、今から出るとちょうどいいね」
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「兄サマー、お昼までには出発しようねー」
 扉越しの催促に、瀬人はほんの僅かに跳ねている前髪の修正を諦めた。ブローでどうにかする代わりに、普段は滅多としないヘアピンで跳ねる部分を横の方へ流して留めてみる。
「まぁ、これはこれで……」
 だが、問題はピンだ。いつもしないピンなど、ちょっと髪の毛を旧時代の家庭教師風に纏めてみたり無理やりアップにしてみたりした時に使ったきりの、地味を通り越した補助用ピンくらいしか、瀬人は所持していない。
 こんな、華やかさの欠片も無いようなピンなど!
 心の中で叫んだところで問題は解決せず、瀬人はコートを羽織りバッグを持って部屋を出た。髪形以外はもう準備を済ませている。ピンさえ気にしなければこのまま出掛けられるのだ。
 階下へ降りる間に擦れ違ったメイドたちに何かピンを持っていないかと聞いて回ったものの、「今していらっしゃるそういうピンなら」との答しか得られず、瀬人は少々落ち込んでホールへ出た。
「あ、やっと降りてきた」
「あぁ」
「……どうしたの。なんか元気無いみたいだけど」
 斯く斯くしかじか、ピンの件を瀬人が説明する。モクバは一瞬呆れたような顔になったのを取り繕って、ホールに飾られている樅の木から柊の飾りを取り上げた。
「ツリーのオーナメントでも付けていけば? ほら、可愛い可愛い」
 酷く適当な提案だったが、気に入ったようで、瀬人は忽ち機嫌を上向かせた。茶色の髪に赤と緑の柊はまず間違い無くクリスマスらしく、瀬人に似合っているといえば、似合っている。
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 ナーヴたちを送り出したジャックとラリーは、キッチンの片付けを終えると、煤けたソファに座って寛ぎ出した。遊星はまだ起きてこないが、腹でも減れば勝手に目を覚ますだろうとジャックは放置を決め込んでいる。
「ねぇ、ジャックは今日デュエルしに行かないの?」
「昨日大分稼いだからな。あぁ、そうか、まだ見せていなかったか」
 何を、とラリーが聞く前に、ジャックは立ち上がって遊星作の小型冷蔵庫を開けに行った。袋に入れて一纏めにしてあった昨日の戦利品を取り出し、もう一つ冷蔵庫の横に置いていた袋も取ってソファに戻る。がたついた珈琲テーブルの上に袋の中身が空けられると、ラリーはきらきらと目を輝かせた。
「凄い! 凄いよ、おっきい肉だぁ! それにお菓子、あ、果物缶詰も!」
「凄いだろう」
「これ、全部食べていいの? もう一回闇市に流すんじゃなくて?」
「食べていいんだ。クリスマスくらい豪勢にいくぞ!」
 ラリーが飛び跳ねて喜ぶ。少し落ち着けと言いつつ、ジャックは机の上の食材から幾つかを選り分けて、ラリーの前に提示した。
「さて、ラリーよ。ここに大量の砂糖、薄力粉、バターがある。冷蔵庫の中には卵も入っていたな。それで、何が作れると思う?」
 少し間が空いて、それからラリーの顔が興奮に上気した。
「ケーキ!」
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 窓の外から耳慣れた重いブレーキ音が聞こえて、城之内はもう一度鏡に向かった。まあこんなモンだろと結論付けて玄関へ向かう。階段を降りたところで、車から出ようとしている海馬と目が合った。
「お、やっぱお前だった。こんな車乗ってる奴他にいねーから、ブレーキ音ですぐ判んだよな」
「やぁ城之内君おはよう。で、その格好は何?」
 海馬は、一瞬にっこりと笑ったかと思うと、冷え冷えとした視線で頭のてっぺんから爪先まで城之内の姿を見回した。その格好。普通の格好だ。城之内は、何がおかしいのか解らないというように首を傾げた。
「ボク、クリスマスなんだからちゃんとそれなりの格好しなね、って言ったよね?」
「……別に変じゃねぇだろ? 頭だっていつもより時間掛けてセットして――」
 城之内が言い終わる前に、それのどこがそれなりなのさと海馬が溜息を吐いた。
「そんな格好じゃどこにも行けやしないよ」
 そうは言うが、一般的高校生の基準に照らし合わせれば城之内の格好はそれなりである。どこ行くつもりなんだよ、と、今度は城之内が溜息を吐いた。
「どこって?」
 そうだねぇ、と海馬が頬に手を当てて悩む仕種をしてみせる。
「じゃ、まずは服でも買いに行こうか!」
「は? 服って、おま」
 このカッコで行けるトコに変更じゃなくてかよ! 城之内の叫びなど、海馬には当然『聞こえるけど聞こえないもの』だ。
「いいからおいで。今年は、それがボクからのクリスマスプレゼントだよ!」
 本当は何か好きなもの買ってあげようと思ってたけどやめやめ、そう言いながら海馬が城之内の腕を引く。リムジンの後部座席に城之内を押し込んで、彼は運転手に行き先変更を告げた。
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「遊戯」
 きょろきょろと広場を見渡す遊戯へ、海馬は声を掛けた。早くに着いて時計塔の下で待っていたのだが、ちゃんと約束の場所にいたにも関わらずなかなか見付けてくれない遊戯に、痺れを切らしたのだ。
「えっ、あっ、海馬君!」
 驚きのあまり目を真ん丸にした遊戯は、次の瞬間、凄いや全然分かんなかったぜー、とはしゃいだ様子で海馬のコートを引っ張った。コートは、いつもの派手で奇抜なものではない。丈の短い、地味なビスケットカラーのピーコートだ。それに同系色のキャスケット帽を被っている。海馬が俯くと、小さな鍔や膨らんだ頭部の布で、顔が隠れがちになった――周囲から、は。下から見上げる遊戯には、俯こうが関係無くきっちり見えている。
「お忍び、って感じだよね! そういう格好も可愛いなー」
 そうか、と照れたように海馬が呟く。それから、彼は思い出したように、手にしていた赤いビニールバッグを遊戯へ押し付けた。
「あ、有難う! ボクからも、これね」
 受け取って、遊戯は持っていた紙袋を海馬に渡した。二人ともが袋の中のものを取り出す。
「わぁ、凄いやあったかそう!」
 袋の中身は、両方がマフラーだった。ずっと前から、遊戯が海馬にクリスマスプレゼントは何がいいか打診した時から、この日にお互いマフラーをプレゼントし合おうということに決まっていた。
「いい色だな」
 マフラーを巻きながら海馬が言う。海馬君がエッチな気分になってる時の目の色なんだぜ! という真実は心の奥に仕舞って、絶対に似合うと思ったんだと遊戯は返した。
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「いってきまーす!」
「あ、ちょっと、待ちなさい遊戯!」
 母親に呼び止められ、遊戯は家と店との敷居を跨ごうとした姿勢のまま立ち止まった。
「今日寒いのよ。それに夜まで遊んでくるんでしょう。もっと暖かくしていきなさい」
 もっとといっても、遊戯は既にコートを着て手袋もしている。マフラーをしろってことかなと遊戯が思ったのと、彼女が「マフラーとか、していった方がいいんじゃないの」と言ったのはほぼ同時だった。その言葉に、遊戯は慌てて首を振る。
「まだあんまり寒くないからいいんだ。それに、えっと、持ってはいくから」
 これ、と遊戯が手にしていた紙袋を母親に見せる。
「あら、その大荷物マフラーの所為なの? 最初からしていけばいいのに、邪魔くさいことする子ね」
 確かに紙袋は少し大きい。遊びに行くには邪魔なサイズだ。初めから首に巻いていけば嵩張る荷物が無くなり手は空くが、だが遊戯にはそうもいかない事情があるのだった。
「もう、これでいいの! じゃあね、いってきます!」
 紙袋を抱えて、遊戯は寒空の下に飛び出した。紙袋の中には、灰掛かって柔らかな色調の青いマフラーが入っている。
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 朝起きて着替えも済ませアジトの奥から出てきたジャックが気付いた時、遊星は作業場のソファで眠っていた。ソファに移動しているということは寝る意思を持って寝たのだろうが、昨夜の格好のままであるところを見ると、仮眠のつもりで寝入ってしまったか作業が終わった途端力尽きたかのどちらかだ。もしかするとついさっき仮眠に入ったばかりという可能性も無いわけではないが、それにしては寝相が乱れ過ぎている。
 ジャックは、寝入ったのか終わったのかを確かめるべく、遊星の作業机に近寄った。夜の時点で未完成だった豆電球には覆いが付き、個数も増えてコードに連なっている。机の下には銅板だか真鍮板だかを加工したらしき針葉樹の模型が、組み立てられる前の状態で散らばっていた。
 芯と思われるパーツには、たくさんの小さな穴が開いている。それと枝葉の部分を一つ拾って見比べ、ジャックは遊星を起こさないことに決めた。枝の幹側末端には穴に差し込むのだろうフックが付いていて、簡単に組み立てられるようになっている。ここから溶接だの何だのする必要は無い。これは完成しているのだ。
「ゆーせー、ジャック、ご飯――」
 ラリーの声に、ジャックは急ぎ作業場を出た。仕切りのカーテンを捲ったところで二人が鉢合わせる。
「あ、おはよう、ジャック」
 あぁ、と返してジャックはラリーの腕を押した。ラリーの身体が九十度ほど回転し、通路の先を向く。
「あれ? 遊星は?」
「まだ寝ている。昨日も遅かったからな、寝かせておいてやれ」
 振り返ろうとするラリーをさり気無く阻止しながら、ジャックは食堂へ向かった。近付くにつれナーヴたちの喋る雑談が聞こえてくる。
「あいつら、こんな時間なのにまだいるのか?」
「今日は十時‐十八時なんだってさ。年明けまで変則シフトだって」
 再生工場も忙しいのだ。クリスマスにまでご苦労なことだと、賭けデュエルのみで生計を立てる自由人は肩を竦めた。
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「ぅ……ん」
 目覚ましを止めたところで力尽きたのかしら、と、時計の上に手を被せたまま微妙に寝苦しそうな寝息を立てている、とうとう女主になった己の雇用主を見て磯坂は溜息を吐いた。
「瀬人様、朝で御座いますよ!」
 一思いに布団を剥ぎ取って、彼女は瀬人の肩を揺すった。睡眠不足は美容の大敵、だからといって寝ぎたなくなるほど寝るのはどうなのか。寝過ぎて眠い、最近の瀬人の状態はまさにそれであった。そして久し振りの夜更かしで、今朝は通常の意味でも眠いようだ。
「起きて下さいませ! ただでさえ支度が遅いんですから、もう!」
 うぅ、と呻きながら瀬人が起き上がった。昨夜の内に飾り立てられたクリスマス仕様の指先が、覚束無い様子でシーツの上を動く。
「さぁ、起きましたわね? 今日は予定がたくさんおありなんでしょう。早く起きて支度をしないと、またモクバ様をお待たせすることになりますよ」
「……モクバは……?」
「もう起きてらっしゃいますわ。先程廊下で擦れ違いましたもの」
 朝食ご一緒なさるのでしょ、早くしないと先に食べられてしまいますわよ、と磯坂が急かす。漸く慌てた様子になって、瀬人は天蓋を飛び出した。
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