注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
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※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


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 窓の外から耳慣れた重いブレーキ音が聞こえて、城之内はもう一度鏡に向かった。まあこんなモンだろと結論付けて玄関へ向かう。階段を降りたところで、車から出ようとしている海馬と目が合った。
「お、やっぱお前だった。こんな車乗ってる奴他にいねーから、ブレーキ音ですぐ判んだよな」
「やぁ城之内君おはよう。で、その格好は何?」
 海馬は、一瞬にっこりと笑ったかと思うと、冷え冷えとした視線で頭のてっぺんから爪先まで城之内の姿を見回した。その格好。普通の格好だ。城之内は、何がおかしいのか解らないというように首を傾げた。
「ボク、クリスマスなんだからちゃんとそれなりの格好しなね、って言ったよね?」
「……別に変じゃねぇだろ? 頭だっていつもより時間掛けてセットして――」
 城之内が言い終わる前に、それのどこがそれなりなのさと海馬が溜息を吐いた。
「そんな格好じゃどこにも行けやしないよ」
 そうは言うが、一般的高校生の基準に照らし合わせれば城之内の格好はそれなりである。どこ行くつもりなんだよ、と、今度は城之内が溜息を吐いた。
「どこって?」
 そうだねぇ、と海馬が頬に手を当てて悩む仕種をしてみせる。
「じゃ、まずは服でも買いに行こうか!」
「は? 服って、おま」
 このカッコで行けるトコに変更じゃなくてかよ! 城之内の叫びなど、海馬には当然『聞こえるけど聞こえないもの』だ。
「いいからおいで。今年は、それがボクからのクリスマスプレゼントだよ!」
 本当は何か好きなもの買ってあげようと思ってたけどやめやめ、そう言いながら海馬が城之内の腕を引く。リムジンの後部座席に城之内を押し込んで、彼は運転手に行き先変更を告げた。
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「遊戯」
 きょろきょろと広場を見渡す遊戯へ、海馬は声を掛けた。早くに着いて時計塔の下で待っていたのだが、ちゃんと約束の場所にいたにも関わらずなかなか見付けてくれない遊戯に、痺れを切らしたのだ。
「えっ、あっ、海馬君!」
 驚きのあまり目を真ん丸にした遊戯は、次の瞬間、凄いや全然分かんなかったぜー、とはしゃいだ様子で海馬のコートを引っ張った。コートは、いつもの派手で奇抜なものではない。丈の短い、地味なビスケットカラーのピーコートだ。それに同系色のキャスケット帽を被っている。海馬が俯くと、小さな鍔や膨らんだ頭部の布で、顔が隠れがちになった――周囲から、は。下から見上げる遊戯には、俯こうが関係無くきっちり見えている。
「お忍び、って感じだよね! そういう格好も可愛いなー」
 そうか、と照れたように海馬が呟く。それから、彼は思い出したように、手にしていた赤いビニールバッグを遊戯へ押し付けた。
「あ、有難う! ボクからも、これね」
 受け取って、遊戯は持っていた紙袋を海馬に渡した。二人ともが袋の中のものを取り出す。
「わぁ、凄いやあったかそう!」
 袋の中身は、両方がマフラーだった。ずっと前から、遊戯が海馬にクリスマスプレゼントは何がいいか打診した時から、この日にお互いマフラーをプレゼントし合おうということに決まっていた。
「いい色だな」
 マフラーを巻きながら海馬が言う。海馬君がエッチな気分になってる時の目の色なんだぜ! という真実は心の奥に仕舞って、絶対に似合うと思ったんだと遊戯は返した。
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「いってきまーす!」
「あ、ちょっと、待ちなさい遊戯!」
 母親に呼び止められ、遊戯は家と店との敷居を跨ごうとした姿勢のまま立ち止まった。
「今日寒いのよ。それに夜まで遊んでくるんでしょう。もっと暖かくしていきなさい」
 もっとといっても、遊戯は既にコートを着て手袋もしている。マフラーをしろってことかなと遊戯が思ったのと、彼女が「マフラーとか、していった方がいいんじゃないの」と言ったのはほぼ同時だった。その言葉に、遊戯は慌てて首を振る。
「まだあんまり寒くないからいいんだ。それに、えっと、持ってはいくから」
 これ、と遊戯が手にしていた紙袋を母親に見せる。
「あら、その大荷物マフラーの所為なの? 最初からしていけばいいのに、邪魔くさいことする子ね」
 確かに紙袋は少し大きい。遊びに行くには邪魔なサイズだ。初めから首に巻いていけば嵩張る荷物が無くなり手は空くが、だが遊戯にはそうもいかない事情があるのだった。
「もう、これでいいの! じゃあね、いってきます!」
 紙袋を抱えて、遊戯は寒空の下に飛び出した。紙袋の中には、灰掛かって柔らかな色調の青いマフラーが入っている。
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 朝起きて着替えも済ませアジトの奥から出てきたジャックが気付いた時、遊星は作業場のソファで眠っていた。ソファに移動しているということは寝る意思を持って寝たのだろうが、昨夜の格好のままであるところを見ると、仮眠のつもりで寝入ってしまったか作業が終わった途端力尽きたかのどちらかだ。もしかするとついさっき仮眠に入ったばかりという可能性も無いわけではないが、それにしては寝相が乱れ過ぎている。
 ジャックは、寝入ったのか終わったのかを確かめるべく、遊星の作業机に近寄った。夜の時点で未完成だった豆電球には覆いが付き、個数も増えてコードに連なっている。机の下には銅板だか真鍮板だかを加工したらしき針葉樹の模型が、組み立てられる前の状態で散らばっていた。
 芯と思われるパーツには、たくさんの小さな穴が開いている。それと枝葉の部分を一つ拾って見比べ、ジャックは遊星を起こさないことに決めた。枝の幹側末端には穴に差し込むのだろうフックが付いていて、簡単に組み立てられるようになっている。ここから溶接だの何だのする必要は無い。これは完成しているのだ。
「ゆーせー、ジャック、ご飯――」
 ラリーの声に、ジャックは急ぎ作業場を出た。仕切りのカーテンを捲ったところで二人が鉢合わせる。
「あ、おはよう、ジャック」
 あぁ、と返してジャックはラリーの腕を押した。ラリーの身体が九十度ほど回転し、通路の先を向く。
「あれ? 遊星は?」
「まだ寝ている。昨日も遅かったからな、寝かせておいてやれ」
 振り返ろうとするラリーをさり気無く阻止しながら、ジャックは食堂へ向かった。近付くにつれナーヴたちの喋る雑談が聞こえてくる。
「あいつら、こんな時間なのにまだいるのか?」
「今日は十時‐十八時なんだってさ。年明けまで変則シフトだって」
 再生工場も忙しいのだ。クリスマスにまでご苦労なことだと、賭けデュエルのみで生計を立てる自由人は肩を竦めた。
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「ぅ……ん」
 目覚ましを止めたところで力尽きたのかしら、と、時計の上に手を被せたまま微妙に寝苦しそうな寝息を立てている、とうとう女主になった己の雇用主を見て磯坂は溜息を吐いた。
「瀬人様、朝で御座いますよ!」
 一思いに布団を剥ぎ取って、彼女は瀬人の肩を揺すった。睡眠不足は美容の大敵、だからといって寝ぎたなくなるほど寝るのはどうなのか。寝過ぎて眠い、最近の瀬人の状態はまさにそれであった。そして久し振りの夜更かしで、今朝は通常の意味でも眠いようだ。
「起きて下さいませ! ただでさえ支度が遅いんですから、もう!」
 うぅ、と呻きながら瀬人が起き上がった。昨夜の内に飾り立てられたクリスマス仕様の指先が、覚束無い様子でシーツの上を動く。
「さぁ、起きましたわね? 今日は予定がたくさんおありなんでしょう。早く起きて支度をしないと、またモクバ様をお待たせすることになりますよ」
「……モクバは……?」
「もう起きてらっしゃいますわ。先程廊下で擦れ違いましたもの」
 朝食ご一緒なさるのでしょ、早くしないと先に食べられてしまいますわよ、と磯坂が急かす。漸く慌てた様子になって、瀬人は天蓋を飛び出した。
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「ぅ……もう朝、か……」
 鳴り響く目覚ましを止め、海馬は再び天蓋の中へ舞い戻った。海馬ランドのイベントリハーサルに付き合って明け方近くまで起きていた身に、暖かい布団が心地よい。うつら、うつら、再び夢の世界に旅立ち掛けた彼を、執事の声が引き止めた。
「瀬人様! 今年は、何か約束があると仰ってませんでしたか!」
「やく、そく」
「デートだと仰ってませんでしたか!」
 海馬はがばりと反動を付けて飛び起きた。夢の世界に戻り掛けていたのはほんの数分、約束の時間が間近に迫っているわけではないが、うつらうつらしていた人間にはまともな時間感覚など無いものだ。海馬自身には今が何時何分か、分かっていないのだろう。加えてこのところ仕事仕事で時間が無く今日の支度をまだ全くしていなかったのだから、彼が慌てるのは無理も無い。
 海馬はさっき止めた目覚ましを見て、あからさまにほっとした様子になった。そこへ執事がお目覚めですかと声を掛ける。
「約束は十時に童実野広場の時計塔の下でしたか。さぁ、早くお顔を洗いになって、朝食を済ませられませんと」
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「ん……あぁ、もう朝か……」
 目覚ましを止め、海馬は寝台の上で大きく伸びをした。天蓋の外へ出、窓から差し込む光を浴びていると、見計らったように執事が部屋へやってくる。
「お目覚めで御座いますか、瀬人様。今日はよくお眠りになられたようで」
「うん。顔洗ってくるから、ちょっと待ってて」
 ぬるま湯で面を洗い鏡を見れば、普段は色素が沈着したかと思われるほどに濃い目の下の隈も、心なしか薄らいでいる。機嫌良く一通りの手入れを終え、海馬は執事の待つ部屋へ戻った。
「お出掛けには赤いコートでお行きになられると仰せでしたが、内側はこちらの服でよろしゅう御座いますか」
 執事が広げた白いカラー・タキシードに、海馬はうんと頷いた。タイは、黒のリボンタイである。
「それにあのコート着ると、ちょっとサンタっぽいね」
「然様で」
 執事の手が海馬のパジャマのボタンに掛かった。彼は慣れた様子で主人の服を着せ替えていく。同じく慣れた様子で世話を焼かれながら、海馬は今日の予定を思いやった。
「約束、ボク何時だって言ったっけ?」
「十時で御座いますよ。道が混んだとしても、九時半に出れば十分かと」
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 かの有名な新聞配達をする元ヤンは、配達の帰り無謀にも絡んできた宵っ張りの現役ヤンキー四名をボコボコに伸してから、ふと我に返った。
「げ、オレ早く帰って二度寝しねぇと駄目なんだった。今何時よ、クソ、時間喰ったぜ」
 今晩はぜってー寝らんないのに、と呟きながら城之内は自転車のライトに腕時計を近付けた。五時を十分と少し過ぎている。
「十時に迎えに来るっつってたっけ。今から帰って……」
 三時間半は余裕で寝れるなと城之内は一人頷いた。さっさと帰るべく適当に止めていた自転車を進行方向に向け直す。
 ライトに照らされた範囲の端で、頬が少しばかりおかしな形になっている不良が呻きながら目を開けた。ワンパンで仕留めたと思ったのに鈍ったなぁ、とまるで現役のようなことを考えながら城之内が彼に笑い掛ける。無論、目は笑っていないのだが。
「殴られ足んねーんじゃなきゃ、もうちょいそこに倒れてな」
 返事のつもりかもう一度呻いてから目を閉じた不良の横を、新聞配達用のカゴ付き自転車が通り抜ける。
「ま、アイツらもイブの早朝まで夜明かしとは、寂しい奴らだよなー」
 夜道に響かないよう心の中でそう言って、城之内はペダルを漕ぐ足に一層力を込めた。
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