注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
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※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


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「あの、本当に良かったんですか?」
 つるつる滑るパジャマを着て天蓋ベッドに横たわりながら、静香は隣で寝そべる瀬人にそう尋ねた。ベッドには勿論、部屋にも、今は二人しかいない。クリスマスだったのに、と、先を続ける。
「そういうのは、昨日の内に済ませている」
「でも、やっぱり私、お邪魔だったんじゃ」
 一緒に寝る、と瀬人が言った時のモクバの反応は芳しくなかった。尤もその理由は瀬人が言うところの『ガールズトーク』の中身を警戒してのことなのだが、静香にその違いは判らない。やっぱり邪魔よねぇと思うだけだ。
「まぁ、気にする必要は無いさ。だいたい、そんなのはいつでもできることだからな」
 特にクリスマスだからという理由を付けずとも。外泊が困難で滅多と一つ屋根の下に在れないカップルというわけでもない。毎日同じ家に寝起きしているのだから。
「海馬さん余裕だぁ……」
「余裕だとも。それよりも、だ」
 瀬人の指が静香の脇腹を摘んだ。むに。聞こえない筈の音が二人の脳裏をよぎる。
「な、何するんですか、もう!」
「こんなものか……おい、オレのも摘んでみてくれ」
「えぇ?」
 今度は、静香の指が瀬人の脇腹を摘む。うに。やはり聞こえない筈の音が聞こえた。
「どう思う」
「どうって、ええと、普通? ですよね?」
「ちょっと付き過ぎじゃないか?」
 何を、とは言わない。肉だ。言わずとも、女同士ならば通じるものである。
 ダイエットだの何だの、二人の会話に花が咲く。フランス式ダイエットに言及している辺り、モクバの警戒は実に正しかったということだ。
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「あ、そうだ。海馬君にメールしとこう」
 寝るつもりでベッドに入った遊戯だったが、ふと思い立ち枕元に放っていた携帯のメール作成画面を出した。うつ伏せになって枕の上でカチカチとボタンを押す。
「うんと……昨日は楽しかったね、かな……あ、そうだ、海馬君が選ぶの手伝ってくれたお土産が母さんに好評だったっていうのも言っておかないと。腰大丈夫だったのかも気になるけど、これ聞いたら怒るよね……あ、朝の謝った方がいいのかなぁ」
 ああでもないこうでもないと文面を練り、遊戯はメールを完成させた。送信ボタンを押して力尽きる。返信は割りにすぐ届いたが、欠伸一つを最後に、遊戯はもう寝入っていた。

Time: 12/25 22:46
From: 海馬瀬人
Subject: Re:おやすみ
謝るくらいなら端からするな。この痴れ者が。
土産は喜ばれたようで何よりだ。
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 あと三時間ほどで今年の役目を終えるクリスマスツリーは、片付けられる前最後の点灯をされ、きらきら光を放っている。
「あー、片付けるの勿体無いよぉ。ずっと出してちゃ駄目?」
 ラリーの訴えに、やめておけとジャックが答える。
「えーっ、何でー?」
「有り難味が減る。来年のクリスマスに、仕舞っていたツリーを出す楽しみを無くしたいか?」
「うぅ……」
 二人のやり取りにナーヴたちが忍び笑いを漏らした。くく、と三人分の声が重なる。
「ジャック、来年の話をすると鬼が笑うぞ」
「鬼が何だ、勝手に笑わせておけ」
 確かに、差し当たっては来年のクリスマスより目前の年越しが重要だがな。ジャックが言うと、三人は忍び笑いを溜息に変え頭を抱えた。年越しは、色々なものの清算時期である。例えばツケ、例えば借りもの。
「ヤベェんだよ……オレ年越せないかも」
「オレも」
「オレもだよ」
 再生工場の賃金はあまりよろしくないのだ。ツケでなんか飲むからだ馬鹿めとジャックが辛辣な言葉を吐く。
 もーぉいーくつ寝ーるーとぉ、おーしょぉがぁつー。項垂れる三人の横で、ラリーが陽気なメロディを歌った。
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「まだ転がってるとか……なんて嫌がらせだよコレ」
 さすがに撃ち止めだし明日も配達だし配達のあとバイトあるしつかお前も明日仕事だろ、と捲くし立てて海馬邸を辞した城之内は、目の前の光景に軽い頭痛を覚えつつ悪態を吐いた。
 安アパートの周囲に、昼間伸した奴らが、記憶そのままの格好で転がっている。
「こんなトコ転がってたら凍死すんだろうが。海馬じゃあるまいし、人死にとか勘弁だぞ」
 そんなの揉み消せばいいじゃないと海馬の声が聞こえたような気がしたが、城之内はいやいやそれはと頭を振って、一番近くに転がっていた男の傍に膝を付いた。
「オラ、起きろよ」
 肩を揺すると呻き声が上がる。城之内は彼の頬を軽くはたいた。
「な、ん……」
「おっしゃ、お目覚めだな。仲間起こしてとっとと帰ってくれる?」
 上体を起こしながら、仲間、と男が呟いた。頭に手をやり、何ごとか考え込む。
「おいおい大丈夫かよ。記憶飛んでね? オレ、お前、ボコボコ。オッケ?」
 男の目の焦点が、段々しっかりとしてくる。目線が城之内を捉えると、男は今更過ぎる悲鳴を上げた。
「あー、覚えてんね。じゃ、仲間起こしてとっとと帰れ」
 城之内はそれだけ言い置くとアパートの階段を上り始めた。その背に、待て、と男が呼び掛けを投げ付ける。
「テメェは、確かに強かったかもしんねぇ。けどな、あんま舐めてんじゃねぇぞ。たかが童実野の野郎が粋がってっと、テメェのクラスメイトが痛い目に遭うことになるんだぜ」
 総力戦なら負けねぇんだと、男が低く笑う。城之内は振り返ってガンを飛ばした。
「前に同じこと言った奴ァ、廃工場の屋根から転落して全治何ヶ月だかの大怪我だ。なんかすんなら、そこんとこは踏まえとけよ」
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「米里の方、道路も通行止めだってさ」
 この雪じゃヘリも飛ばないよと、部屋へ戻ってきたモクバがお手上げのジェスチャーをする。道路、も、通行止め。単線しか通っていない電車も、運行中止で復旧の目処無しなのだ。
「仕方ないな。静香、泊まっていけ。雪がやんだら明日の朝一で送ってやる」
「え、いいんですか?」
「気にするな、部屋なら幾らでも空きがある。あぁ、それとも一緒に寝るか? 前にこんなベッドで寝てみたいと言ってただろう」
 お姫様のベッドみたいで素敵、こんなベッドで寝てみたいなぁ。確かに、そう呟いた記憶は静香の中に残っている。だが。
「えっと、でも、それはその、二重の意味でいいんですか……?」
 静香の視線が瀬人とモクバの間を行き来した。つまりは筒抜けである。「取り敢えず」と口の端を引き攣らせ気味にモクバは電話を指した。
「電話、したら? 一人暮らしじゃないんでしょ」
「あ、うん、そうよね」
 受話器を取り、家の電話番号を押す。数コール待って、あ、と静香が声を上げた。
「もしもし、お母さん? あのね、今海馬さんのおうちでね、……あ、そうなのよ、それで、うん、そう、それでおうちに泊めてもらうから、うん、大丈夫よ、分かってるわ……」
 電話する静香の後ろで、モクバが瀬人に耳打ちする。
「あのさ、どこまで筒抜けなの?」
「別に大して。ただのささやかなガールズトークの範囲だ」
 ガールズって。モクバは溜息を付いたが、年齢考えてもの言ってよとは、言いたい心を抑え付けてでも言わなかった。それが禁句であることは、随分前に学習済みなのである。
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 杏子たちと別れて、遊戯は帰りのバスに乗った。中途半端な時間だからか乗客は多くない。開いている一個席に座り、窓の外を眺める。
 あ、これ大回りの路線だ。バスが動き出してすぐ、遊戯はそのことに気付いた。普段よく使うバスと、アナウンスされた路線番号が異なる。この番号だと、基本は同じ道だが途中で私道に回り込み、二つか三つ余分に停留する路線の筈だ。
 遊戯にとっては遠回りになるバスだが、まあいいや、と彼は幾分機嫌良くそのアナウンスを聞いた。大回り路線に組み込まれている私道は、海馬コーポレーションの所有である。
 幾つかの停留所を通過して、バスが私道に入った。見覚えある大きなビルへ近付くにつれ、遊戯の心が少し弾む。
「海馬コーポレーション前ー、お降りのお客様は――」
 ボタンは押されなかったが、バスは止まった。新たに数人、仕事帰りと思しき集団が乗り込んでくる。
「いやぁ、この冬の商戦は調子がいい」
「今年は社長のメディア露出が後押しをしてくれているからな」
「社長と言えば、今朝の見たか?」
 今朝の? 遊戯が彼らの会話に聞き耳を立てる。
「十分遅刻で会議室に駆け込んだところなら見たぜ。廊下走ってたんだろ、あの社長が遅刻なんて珍しい」
「それが、なんか腰抑えてダルそうに走ってたって。で、昨日休みだっただろ」
 話していた彼らは、一拍置いて、あー、と気の抜けた声を出した。
「若いね、羨ましい」
 遊戯は俯いたきり顔を上げられなくなった。きっと、顔は真っ赤に違いない。多分思われているのとは少し、こう、上とか下とかその辺が違うのだろうけど。
「お色気系、可憐系、淑女系」
「……淑女に千円」
「じゃあオレはお色気」
 ボクどれになるんだろう……というかむしろ海馬君が淑女系だよねマグロだもん。俯いたまま、心の中で遊戯は昨夜を振り返った。
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「クロウのところに行ってきたのか」
 夕飯の席で、雑談からジャックが日中の話をした。どうにもあまりそうな分を、クロウのところとマーサのところへ、分担して分けに行ったという話だ。
「けど、クロウのとこってアレだろ、ブリッジの近くだろ。あの辺ギャングが出るらしいじゃん。よくそんなとこ一人で行くよな」
 ナーヴの科白に、ジャックは首を傾げた。確かにあの辺りは物騒だが、それはサテライトならどこもそうだというレベルで、正直この辺と大差無いのではないだろうか。それに、クロウもここは割りと住みやすいとしか言っていなかった。ギャングが出るなら一言くらい注意があってもしかるべきだ。
「今日行った感じでは、特に物騒ということも無かったぞ? どこで聞いた話だ」
「どこって、あっちのエリアから来てる奴らがさー。工場の奴らだよ」
「クロウは何も言っていなかったが……」
「あれ? おかしいなー。ギャングが縄張りにしてて怖いって」
 お前らも聞いたよな、との問い掛けに、ブリッツとタカも頷く。ジャックはますます首を傾げた。
「というか、そのギャング、クロウのことじゃないのか」
 ぼそりと遊星が呟く。あ、と四人の声が揃った。
「でもってちょくちょく尋ねてく遊星とジャックのことだな」
「だろうな」
 そのエリアでは暴れたことのないジャックが不満そうに唇を曲げる。まあまあ、とブリッツが彼を執り成した。
「オレらは慣れてるけどさ、普通大人しく再生工場に通ってるだけの奴には、賭けデュエルだとか闇市商売だとかって聞くだけでも、ちょっと怖いモンなんだって」
 慣れりゃ、こうやっていいモン食わしてもらえるし、感謝感謝だけどな。鶏肉を頬張りながらブリッツが言うのに、ジャックはふんと拗ねた調子で顔を逸らした。
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「喧嘩してきたね?」
 さすがに無傷とはいかず頬に擦り傷を作ってきた城之内を見て、海馬はそう断じた。
「すぐ戻ってくるって言ったくせに遅いし、何をしてるのかと思えば。あぁやだやだ、野蛮だったらないよ」
「仕方ねぇだろ? ウチの前に溜まられてたんだからよ」
「家の前に張り込まれるような何をしたのさ」
 う、と城之内が言葉に詰まる。詰まって、それはいいからと彼は本題を思い出した。
「んなことより、ほら。これ、プレゼントな」
「……え。プレゼントってそれだったの?」
 それ、と海馬は城之内の抱えてきた巨大な鰐のぬいぐるみを指差した。何か持ってるなぁとは思っていたが、まさかそれをプレゼントと言われるなんて予想外である。
「しかもプライズ品だし」
「可愛いだろ、鰐。結構苦労して取ったんだぜ」
 連コインしたもんと長さ一メートル強はありそうな鰐を海馬に押し付ける。連コイン。ゲームセンターの景品だ。小さいサイズの掴みにくい引き換え札を落とすと貰えるタイプだった。
「けどまたなんで鰐」
「え? 可愛いだろ? ちょっと間抜け面でさ」
「……ボクとキミの美的感覚が大いにずれてることは理解したよ」
 キミに好かれてる自分に疑問を持った、とまでは言わなかった。少し思いはしたのだが。
「まぁ、可愛いかどうかはともかく、プレゼント自体は嬉しいよ。有り難う」
 問題はどこに置くかかな、と、海馬は巨大な鰐を抱えて部屋を見回した。
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