注意! カップリングも傾向もごった煮の無法地帯です。苦手な方はUターンどうぞ。最近はシモネタにも注意した方がよさそうです。今日、昨日、明日。起きてから寝るまでが一日です。
Calendar
<< 2008/12 >>
S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31    
AdministrativeLink
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


 彼女たちの前に、ワゴンが一台運ばれた。ワゴンには、ポットにティーカップ、揃いの皿とフォークにナイフ、それから長方形のギフトボックスが乗っている。
「開けるわよー、見て驚きなさい」
 小百合がギフトボックスに手を掛けた。持ってきた紙袋の中身がこの箱だったのだ。彼女が差込口を外すと、箱は展開図のような開き方をしてその中に抱えていたものを顕にした。
「あっ、可愛い!」
「ちょっと凄いでしょ? ブッシュ・ド・ノエル、ブルーアイズの隠れ家風。手作りよぉ」
 チョコクリームで覆われたロールケーキには飴細工やドライフルーツが飾られ、丸太の陰で冬篭りする小動物の巣を思わせる様相になっている。ただ、切り株の影や丸太の上から顔を覗かせるのは栗鼠でなくマジパンのブルーアイズなのだが。
「これ、小百合さんが作ったんですか?」
「半分アタシ、半分瀬人ちゃん。マジパン製作は瀬人ちゃん」
「通りで。好きねぇブルーアイズ」
 マジパンのディテールは半端無く細かい。いつ作ってたの、とモクバが横の瀬人に尋ねた。
「この間小百合の家に行った時だ。その時に仕込みまでやった」
「で、昨日の内にアタシが仕上げ。我ながら傑作だわー。写真撮る?」
「撮る撮る。ちょっとアナタ、シャッター押してよ」
 先程から大活躍のデジカメが北村社長の手に渡る。ケーキを前にきゃっきゃとポーズを取る女たちから、モクバは写真の枠外へ出る程度、静かに距離を置いた。
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


「何かちょっと、小腹が空かない?」
 遊戯の言葉に、その場にいた全員――杏子と本田、それに獏良と御伽が頷いた。
「昼はハンバーガーだけだったしね」
「ボク何か甘いもの食べたいなぁ」
「クリスマスらしくケーキとかいいわよね」
 ケーキ。それならいいトコ知ってるぜと、本田がやや愉快そうに告げる。本田とケーキ屋の取り合わせに皆懐疑的だが、まあいいから付いて来いよと言って彼は歩き出した。
「こっちの、すぐ近くだからよ。裏手んトコにあんだ」
「あー、そういや評判ね。本田が知ってるなんて意外だけど」
「ま、諸事情ってヤツだよ。お、ほら、そこの看板」
 前方にお洒落な洋風の店が見える。店内での飲食だけでなく買って帰ることもできるのか、ちょうど白いケーキの箱を提げた女性客が出て来たところだった。彼女と擦れ違って、遊戯たちが扉を開ける。
「いらっしゃいま――ゲッ」
 遊戯たちを出迎えた店員は、主に本田の顔を見ると、心底嫌そうに蛙の潰れたような声を出した。
「うっわ、似合わねーなーお前! ギャルソンかよ!」
「やだぁ、城之内じゃない。それで本田が知ってたのねー」
 かっちりしたベストに黒い腰エプロンは、確かに普段の雰囲気ではない。似合ってないとは言わないけど見慣れないなぁと、遊戯も心の中でその格好に評価を下した。
「んだよ、これ着てっと三割り増しでモテんだぞ」
「元がゼロのところに三割り増ししたってゼロのままだろ?」
「テメ、言ってくれんじゃねーか。オレはお前よりはモテんだからな、この失恋大将」
 どんぐりの背比べだねと御伽が肩を竦める。どんぐりの背比べだろう、ファンクラブのある御伽や獏良にしてみれば。
「誰がどんぐり、つかお前らだってクリスマスに淋しく団体行動してんだろーが。なぁ遊戯」
 話を振られ、遊戯は曖昧にえへらと笑った。デートはイブに済ませたと、この流れでは言えない。この流れでなくても言えない。
 幸い皆遊戯の笑いを苦笑と取ったようで、追求の手は伸びなかった。話を切り上げ、城之内が遊戯たちを奥の席へ案内する。メニューを開いて、美味しそう、と杏子が歓声を上げた。
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


「あ」
 冷蔵庫の前に座り込んでいたラリーと、ジャックの目が合った。暫く見合って、ラリーが根負けする。だって、と彼は言いわけを始めた。
「だってさ、帰ってくるの遅いんだもん。待ってようと思ったのに」
「それで菓子を摘み食いか。先に食べてればよかっただろう。飯を」
 バタークリームの入ったボウルを抱え、パンを銜えたままラリーが頬を膨らます。
「何だ」
「一人で食べても詰まんないよーだ」
「一人? あぁ、遊星もまだなのか。マーサのところの方が近いだろうに」
 しょうのない奴だなと呟きながら、ラリーの向かいにジャックが腰を下ろす。
「ジャック?」
「オレにもパンを一枚寄越せ」
 出された手に、脇に置いていたパンを一枚ラリーが差し向ける。ジャックはそれを取り、ボウルのスプーンでクリームを掬うとパンの上に落とした。
「え、ご飯じゃなくていいの?」
「一人で食べても詰まらないんだろうが」
 言いながらジャックはパンを齧った。対面には、きょとんと不思議そうな顔をしたラリーがいる。今ここにいるのは、一人ではない。
「遊星、が」
 説明させるなとでも言いたげに、ジャックはじと目でラリーを睨んだ。
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


「そういやオレもプレゼントあんだよ。あとで取ってくる」
 米とレトルト食品に喜んだあと、城之内は海馬にそう言っていた。そして今、言葉の通り彼は自宅へ戻っている最中である。本当は早朝新聞配達のついでに取ってくるつもりだったのだが、昨日伸した奴らとその仲間が家の前に張っていたため、あとででいいかとユーターンしたのだ。
 しかし現状を見るにユーターンは無駄だったようで、アパートの下で溜まっているヤンキーたちに城之内は顔を顰めた。
「なんか増えてるしよ……」
 一、二、三、四、と指で指しながら数えてみる。九、で止まって城之内は頭を掻いた。
「昨日の奴らは雑魚だったからいいとして、他がどうだかなぁ。どこの奴らだろ」
 もし隣玉とかだったら逃げよう。雑魚抜いても隣玉相手に五対一はキツイし面倒だし。後ろ向きな決意をして、城之内は彼らの前に歩き出た。
「あ、コイツっすよ、コイツ」
 頬を腫らした男がそう言って立ち上がった。全体的に雑魚っぽいし隣玉は違うかなと、城之内は挑発気味に口を開いてみる。
「おーおー、男前になっちゃって。てめーらどこ校だ」
「尾瀬呂だ馬鹿野郎!」
「尾瀬呂ぉ?」
 どこだっけそれ。珍しく頭をフル回転させ、それから城之内はああ、と手を打った。東の方の軟弱校だ。確か。
「んなガッコとやれっかよ。オレの格が下がんだろーが。散れ散れ」
「な、舐めてんじゃねぇぞ! てめーだってたかが童実野らしいじゃねぇか、こっちが何人いると思ってんだ」
「九だろ。内四名負傷済み」
 面倒くさいなと思いながら、城之内は拳を構えた。面倒くさいが、散らないんだから仕方ない。路地に誘い込めば雑魚九人くらいはどうにかなるだろうし。面倒くさいけど。
「つーかさぁ、お前らオレのこと知らねぇの?」
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


「ハーイ、来たわよ社長」
「あ、海馬さん、こんにちは。お邪魔しまーす」
 派手な衣装に身を包んだ北村夫人と清楚なワンピースの静香が揃ってホールへやってきた。彼女たちの髪に付いた雪が暖炉の熱に融ける。
「何だ、二人一緒か」
「そこで一緒になったのよ。あ、旦那も来てるんだけど、今車庫に案内されてるわ」
 恭子の言葉に、瀬人の後ろへ控えていたモクバはそっと胸を撫で下ろした。昨日の約束を反故にされたかと、一瞬疑ったことを心で詫びつつ。
「瀬人様、もう一方――」
「メリークリスマス瀬人ちゃん! あれ持ってきたわよー」
「小百合」
 瀬人と張る高身長のブリーチブロンドが、ハイテンションで四人の前に紙袋を掲げた。中身を知っているのは瀬人だけだが、恭子と静香もノリで手を叩く。
「食べるのあとでしょ? 冷暗所に置いといた方がいいと思うんだけど」
「あぁ、そうだな。磯坂」
「お預かりしますわ」
 家政婦に紙袋を渡し、小百合は服の雪を払った。殆ど水に近いみぞれが辺りへ飛ぶ。
「また降り出したのか」
「除雪車出てるみたいよ。アンタんトコのフットマンたちも大変そうじゃない」
「ウチの旦那もチェーンがどうとかって出掛けにわたわたやってたわぁ。けど、ま、他人事だと思うと素敵よね。ホワイトクリスマス」
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


 結局、多過ぎた戦利品はお裾分けという形で消費されることに決まった。調理場には二つの折り詰めが並んでいる。
「マーサのところに行けばいいんだな」
「あぁそうだ。オレがクロウのところへ行く」
 折り詰めの一つを持って、それからジャックは冷蔵庫の横に置かれた袋に視線をやった。
「……菓子類も少し持っていってやるか。ガキどもが喜ぶだろう」
 袋の中身は、常温保存の菓子や缶詰である。縛っていた口を開け、ジャックはチョコレートやクッキーといった菓子の大袋を取り出した。
「この辺、ダブってるからな。おい、遊星。お前も持っていけ」
 袋を二つ、遊星に向かって投げる。同じ菓子を持ち、折り詰めと一緒にしてジャックはキッチンを出た。
「あ、ジャック出掛けるの?」
「クロウのところへ行ってくる。遊星もマーサのところに。昼頃には帰る」
「ん、いってらっしゃーい」
 ラリーの声を背に、二人はアジトを出て地上に向かった。途中までを揃って、その先を別れて歩く。暫く行くと、ジャックの目に先の無い橋が見えてきた。袂の瓦礫の隙間から、オレンジの髪が覗いている。
「クロウ!」
 呼び掛けに、彼と、彼に纏わり付く子供たちが姿を現した。
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


 枕元の携帯が震え、遊戯はゲームを中断した。携帯を開き、新着のメールを読む。

Time: 12/25 10:31
From: 真崎杏子
Subject: メリークリスマス!
今駅前で本田と会って、皆暇そうなら集まって遊ばないかって話になったんだけどどう?
来れそうなら、駅で待ってるからメールしてね音符

「今日かぁ。暇だよねー」
 海馬邸から追い出され家で一人ゲームをやっていただけなのだから、断る理由はどこにも無い。遊戯はセーブをしてゲームの電源を落とすと、「今から行くよ」と短いリターンメールを送信した。コートを羽織り、昨日貰ったばかりのマフラーを首に巻く。
「えっと、財布財布……あ、昨日の鞄の中だ」
 ものの数秒で支度を済ませ、遊戯は二階の部屋から下へ階段を駆け下りた。連絡口から開店休業状態の店へ出る。
「何じゃ、今日も出掛けるのかの」
「あ、じーちゃん。うん、さっき杏子からメールが来て、皆で遊ぶんだ」
「おお、そうかい、気を付けて行ってくるんじゃぞ」
「うん、あ、ママに遊びに行ったって言っておいて! じゃあ、いってきまーす!」
 ちょうどバスの時間が近く、遊戯は停留所に向かって走った。軽いマフラーの端がひらひらとたなびく。少し昨日を思い出して、遊戯は口を緩ませた。
※クリスマス企画です。先に説明からご覧下さい。


+++


「うわー、改めて見るとスゲェな」
 お荷物が届いております、と執事に呼ばれて行ってみれば、ホールに化粧箱の大群が押し寄せていた。全て、昨日海馬が買った城之内の服である。開けても開けても服。しかもスーツや礼服ばかり。
「プレゼントっつーけど、こんなに、持って帰っても仕舞うトコねぇぞ」
「じゃあ置いて帰れば? どうせしょっちゅう通ってるんだし」
 全然プレゼントらしくねぇなと言う城之内に、一応服以外も用意してるけどと海馬が答える。一応、だから海馬的には大したことの無いものなのだろうが、城之内には充分だ。
「あれ、けど、今年のプレゼントは服って言ったじゃん」
「それは何か好きなもの買ってあげようと思ってたのの変わりに、だよ」
「そんじゃ有り難く。あ、着てったヤツ発見」
 一つだけ段ボール箱に入れられていた服を城之内が出す。現在は来客用の服を着せられているが、落ち着かないし早く自分の服に着替えてしまいたいと思っていたところだ。
「ま、この服は海馬んトコに預けとくとして。部屋戻って着替えたいんだけど」
「あぁそう? じゃあ、この服はボクの衣装部屋の中に入れておいて。城之内君、着替えはこっちでね。ポーターの邪魔になるから」
 こっち、と引っ張って行かれた談話室で城之内は手触りの恐ろしくいい服を脱いだ。元々自分が着ていた服装になって、ほっと息を吐く。
「で、それ何?」
 人心地付くと、珈琲テーブルの上に乗った箱が目に入る。テーブルの面積の大部分を占める箱は、ラッピングに使うようなリボン付きシールが貼られているだけのダンボールだ。
「プレゼントってとこかな。一応、のだけど、キミにとってはメインかも」
「へぇ、何が入ってんの?」
 見てごらんよとの言葉に従い、城之内が箱を開ける。おお、と喜びの声が上がった。
「やっぱお前は解ってるぜー!」
「解りたくないんだけどねぇ」
 巨大段ボール箱の中身は、米と、海馬コーポレーション謹製レトルト食品の詰め合わせである。
<< Future  BlogTop  Past >>
|1|2|3|4|5|6|7|8|9|
BlogPet
突付くと喋りますが阿呆の子です。
BlognPlus


Template by Toko/A violet